車載の組込み求人に出す志望動機で、最初に書きたくなるのは「車が好きだから」だと思います。悪い動機ではありません。ただ、それだけでは他の応募者と区別がつきません。

この記事のゴール

  • 「車が好き」を、車載という領域を選んだ理由に変える
  • 評価される5つの理由と、知っておくべき車載の3つの現実を押さえる
  • 完成車メーカー・ティア1・受託で、応募先の階層ごとに書き分ける

筆者は現役の車載組込みエンジニア


だいき
現役の車載組込みソフトエンジニア
機械系のテストエンジニアから、プログラミングほぼ未経験で車載組込みソフトへ転職しました。いま実際に車載のソフトを開発しています。

ここで書く内容は、中途の転職でも新卒の就活でも変わりません。車載という領域を選ぶ理由は、社会人でも学生でも同じところから作ります。新卒の方は、前職の話を学業や研究に読み替えて読み進めてください。学生が書く場合の文章の形は新卒向けの作例にあります。

車載を志望する理由は、この5つから選ぶ

「車が好き」は動機にならない。評価されている5つの理由から、自分の経験に合うものを選ぶ。

「車が好きだから」は、車載の志望動機で最も多い書き方です。好きなだけでは動機になりません。自動車業界の志望動機で実際に評価されているのは、次の5つです。この中から自分に当てはまるものを選んでください。

  1. 事故のない社会に貢献したい自分や身近な人が交通事故に関わった経験がある人、安全装置に助けられた経験がある人
  2. 変革期に関わりたい(CASE)つながる車、自動運転、シェア、電動化のどれかに具体的な関心がある人
  3. 環境負荷を下げる技術に関わりたい電動化やカーボンニュートラルを自分のテーマにしている人
  4. 1台のソフトが何十万人に影響するスケールで仕事がしたい前職で扱った製品の台数が少なく、影響範囲の大きい仕事をしたい人
  5. 走り・燃費・安全性という性能そのものを制御で作りたい機械・電気系で、性能を決める側に回りたい人
「車が好き」を動機に変える方法
車に関わる自分の経験を、動詞で書き出してください。運転する、整備する、観戦する、選ぶ、貸す、直す。名詞(車が好き)ではなく動詞にすると、上の5つのどれに近いかが見えてきます。

たとえば「整備する」が出てきた人なら、故障の原因を追ってきた経験から5へつながります。「選ぶ」が出てきた人なら、安全装備を基準に選んだ話から1へつながります。

志望理由を書く前に知っておく、車載の3つの現実

車載は、組込みのなかでも品質の要求が特に厳しい領域です。その厳しさを分かったうえで選んでいるかを、面接官は見ています。上で選んだ理由に、この3つのどれかを添えてください。
1出したら簡単には直せない

市場で不具合が出るとリコールになり、ディーラーで1台ずつリプログラミングをします。一斉更新という手が基本的に使えません。最近はOTAで直せる範囲も増えましたが、簡単には直せない前提で作ることに変わりはない。

2不具合が事故に直結する

市場不具合は重大事故につながります。だから求人票にも機能安全という言葉が出てきますし、開発の中で確認と検証の工程が長い。ミスが許されにくい仕事だという理解は、志望動機に書いていい内容です。

3開発の中心がソフトへ移っている

EV化や車のIT化が進み、車載でもソフトウェアを中心に据えた開発の進め方に変わってきています。新しい規格への対応も次々に出てくるので、開発のスピードは上がる一方です。

この3つは、そのまま志望動機の材料になります。1の重さに責任を感じられる人、2の慎重さを苦にしない人、3の変化の速さを歓迎できる人。自分がどれに当てはまるかを1つ選んで書くと、車を好きだと言うより説得力が出ます。

私が面接で添えていた一言【体験談】

私は機械系から車載組込みへ移りました。そのとき志望理由として話していたのは、ものづくりのエンジニアとして生き残るために電動化とITの両方を手に入れたい、という筋です。そこに毎回、一言だけ添えていました。

面接で添えていた一言
「車載も最近はソフトウェアファーストで開発している」。自分の都合だけでなく、業界の動きと自分の判断が同じ方向を向いていると示すために入れていました。志望理由の骨子そのものは、どの面接でも一貫して同じことを話しています。

この一言を入れると、車載を選んだ理由と、いま業界で起きている変化がつながります。応募先の会社が新しい領域に投資しているなら、なおさら話が合います。

志望動機を5つの要素で組む考え方は、組込みエンジニアの志望動機の作り方にまとめています。


// あわせて読みたい
組込みエンジニアの志望動機の作り方|未経験転職で使った例文つき

車載向けの作例(置き換えるところつき)

作例 1異業種の未経験から車載の組込み求人へ応募する場合

① 結論
不具合が人の安全に直結する製品のソフトを作りたいと考え、車載の組込みエンジニアを志望しました。
② 背景
前職では産業機器の評価を4年担当し、出荷後に不具合が出たときの回収と対応の重さを現場で見てきました。そのなかで、後から簡単に直せない製品ほど、作る段階の検証に価値があると考えるようになりました。転職前にC言語の基礎を学び、マイコンでセンサーの値から機器を自動制御する装置を1つ作っています。
③ 接続
不具合が起きたときに影響範囲を見て原因を追う考え方は、検証の工程が長い車載の開発でも活かせると考えています。
④-a 業界
車載は出荷後に簡単には直せず、不具合が事故に直結する領域だと理解しています。その厳しさの中で作る側に立ちたいと考えました。開発がソフトウェアを中心に進む形へ変わっている点にも、いま関わる意味を感じています。
④-b 企業
貴社は◯◯の領域で車載向けの開発を手がけられており、求人票にある△△の工程は、車の挙動そのものに関わる部分だと理解しています。
⑤ 入社後
入社後はまずC言語とマイコンの理解に加え、CANなど車載特有の技術を業務レベルまで引き上げたいと考えています。

これは私が実際に出した文章そのものではなく、車載応募のために組み直した作例です。置き換えるのは②③④で、④-bには応募先が扱っている領域と、求人票の担当工程を必ず入れてください。

④は「なぜこの業界か(④-a)」と「なぜこの会社か(④-b)」の2階層です。この記事が扱うのは④-aにあたる、車載を選んだ理由です。

車載でよくあるNGと直し方

やりがちな書き方 どう読まれるか
車が好きなので志望しました 車載志望者のほぼ全員が書く。仕事の中身に触れていない
自動運転に興味があります 興味の表明だけ。担当する工程と結びついていない
大きな製品に関われるのが魅力です 規模の話。なぜ車載なのかの答えになっていない
好きな車種があり、その開発に携わりたいです 消費者の目線のまま。部品を作る会社では特にずれる
成長分野なので将来性があると思いました 業界予測で、自分の話になっていない
損をする書き方昔から車が好きで、自動運転などの先進技術にも興味があります。成長分野である車載業界で、大きな製品の開発に携わりたいと考えました。

直したあと車載は出荷後に簡単には直せない製品で、不具合が事故につながる領域だと理解しています。前職で出荷後の不具合対応を経験し、作る段階の検証に価値があると考えるようになりました。貴社が扱う◯◯は、車の挙動に直接関わる部分だと理解しており、その厳しさの中で作る側に立ちたいと考えています。

右側には、車が好きだという言葉が1つも入っていません。それでも車載を選んだ理由は伝わります。好きだという気持ちは、書かなくても仕事の理解から滲みます

応募先の階層で書き分ける

車載の求人は、完成車メーカー、部品メーカー、その下請け、そして開発を請け負う会社と、階層に分かれています。志望動機で語る対象は階層によって変わります。

完成車メーカーや上位の部品メーカーなら、製品そのものを名指しできます。一方、下位の階層や受託の会社に対して完成車の話をすると、担当範囲とずれます。その会社が作っている部分は何かを求人票と実績ページで確認して、そこを語ってください

待遇の話も正直に書いておきます。私の印象では、Tier1までの部品メーカーなら待遇はそこそこ良く、Tier2は悪くない程度、Tier3以降はあまり良くないという感覚です。統計ではなく業界にいる私の印象ですが、応募先を選ぶときの参考にはなると思います。

車載の仕事内容そのものをもう少し詳しく知りたい場合は、車載組込みソフトとは?にまとめています。


// あわせて読みたい
車載組込みソフトとは?仕事内容を現役エンジニアが解説

入社後に覚えることを具体的に書く

入社後の欄は、車載志望なら書きやすい部分です。私が実際にゼロから覚えたのは、この辺りでした。

  • CAN。車の中の機器同士がやり取りする通信の仕組みで、車載では避けて通れません
  • ダイアグ。車の故障診断の機能です。これも車載特有で、入社前に学ぶ機会はまずありません
  • メモリのアドレスの概念。ソフト側の基礎ですが、理解するまで一番苦労しました
  • データシートの読み方。マイコンの設定方法が分からず、最初はここで詰まりました

入社前に勉強できるものでもないので、入社後に覚えるしかないと割り切っています。ただ、何を覚える必要があるかを知っていることは書類で示せます。ここまで書いてある志望動機は、調べたうえで応募していると伝わります。

よくある質問(FAQ)

車が好きという気持ちは、書いてはいけませんか?

書いても構いません。ただし、それだけで終わらせないでください。好きだという1文の後に、車載という領域を選んだ理由を仕事の中身で説明する。この順にすれば、熱意と理解の両方が伝わります。

車の知識や免許は必要ですか?

必須ではありません。私も車の構造に詳しかったわけではなく、車載特有の用語は入社してから覚えました。志望動機で車の知識を装う必要はありません。

機能安全について書いたほうがいいですか?

知っている範囲で触れる程度で十分です。求人票に出てくる言葉なので、意味を調べておくと面接で話がしやすくなります。未経験の応募で規格の詳細を語ろうとすると、かえって浅さが出ます。

車載は忙しいと聞きますが、実際どうですか?

仕事量は増えている実感があります。正確には、開発のスピードが加速して、それに対応する人数が増えているという感覚です。新製品や新しい規格への対応が続くので、忙しい時期はあります。

AIで開発が自動化されると、車載の仕事は減りますか?

現段階で丸ごと置き換わる仕事はないと考えています。自動車のように要求の厳しい製品は、必ず人の目を通す必要があるからです。ただ効率化は進むので、採用が鈍くなる可能性はあります。

まとめ

車載の組込み求人に出す志望動機の要点です。

  • 「車が好き」は入口として置き、選んだ理由は仕事の中身で説明する
  • 直せない製品であること、不具合が事故に直結すること、開発がソフト中心に移っていること。この3つから1つ選んで書く
  • 応募先の階層を確認し、その会社が作っている部分を語る
  • 入社後に覚えること(CAN、ダイアグ、データシート)を具体的に書く
  • 規格の詳細を無理に語らない

車載は厳しい領域ですが、そのぶん製品が人の生活に直接つながっています。その重さを引き受ける気持ちが書けているなら、志望動機としては十分に強いです。

書類の前後を、抜けなく埋める

学習の順番、応募先の選び方、面接で聞かれること。未経験からの転職の流れを1本にまとめています。志望する領域が決まったら、全体の流れを確認してから書類に戻ってください。

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