未経験から組み込みエンジニアになるには?50社応募でわかった準備の全部
未経験から組み込みエンジニアへの転職は可能です。ただし、いきなり大手メーカーに入れるほど甘くはなく、事前の準備と応募先の選び方で結果が変わります。準備せずに数社受けて全滅し、あきらめてしまう人も少なくありません。
- 未経験の書類がどれくらい通るのか(応募50社・通過12社の内訳)
- 中途で現実的に受かるのはSES・SIerとテスト評価のどれか
- 転職“前”に本当にやった準備と、やらなくてよかったこと
- 組み込みで働けない会社を、選考中に見分ける確認ポイント
組み込みエンジニアの仕事内容そのものがあいまいなら、先に組込みエンジニアの仕事内容とは?Web系との違いを読んでおくと、この先の話が具体的になります。
目次
未経験から組み込みに転職できる?50社応募でわかった現実
未経験転職は落ちて当たり前です。これを知っているかどうかで、転職活動の作戦が変わります。
私の応募50社・書類通過12社の内訳【体験談】
応募した企業数
約3〜4か月の活動で
書類選考の通過
およそ4社に1社
書類の通過率
通過の大半はSES・SIer
体感として、未経験の書類はSES・SIerのほうが通りやすく、メーカー系はかなり厳しいという現実がありました。1〜2社落ちただけで「自分には無理だ」と落ち込む必要はありません。母数を確保して、通る企業から内定を取りにいく。これが未経験転職の基本戦略です。
いきなりメーカーは難しい。SES・SIerとテスト評価が現実的な入口
なぜメーカー系は通りにくいのか。理由はシンプルで、未経験者をゼロから育てる余裕がある企業ほど人気が集中し、競争率が上がるからです。新卒なら話は別ですが(就活生向けの節にまとめました)、中途の未経験はここで弾かれやすくなります。
- SES
- システム開発の技術者を客先に派遣・常駐させて働く契約形態。未経験歓迎の求人が多い。
- SIer(エスアイヤー)
- システムの設計・開発を請け負う会社。
- 客先常駐
- 取引先のオフィスに常駐して働く働き方。自社へは出社しません。
そのため現実的な戦略は、まずSES・SIerで組み込みの実務経験を積み、その後にメーカー系へ移るルートになります。厚生労働省の職業情報サイト job tag も、組み込み(IoT含む)システムエンジニアについて「入職にあたって特に学歴や資格は必要とされない」と整理しています。出典はこちらです(職業情報提供サイト job tag「システムエンジニア(組込み、IoT)」)。入職後に身につける前提の仕事だということです。
もうひとつ、最初に就く職種はソフトの実装だけではありません。デバッグ・テストの工程は、駆け出しの組み込みエンジニアが担当することが多い領域です。テスターや品質評価の担当として募集している会社もあり、知識に自信がない段階から段階的に経験を積めます。ここから実装側へ移っていくのも、現実的な入り方のひとつです。

私の前職は、自動車部品メーカーでの機械系のテストエンジニアです。製品の評価と不具合解析を約4年やっていました。評価の仕事は「この製品はどう動くべきか」を仕様書から読み取って、そのとおりに動くかを確かめる仕事です。組み込みソフト側へ移ってからも、仕様書の読み方と不具合の追い方はそのまま使えました。評価から入ることは、遠回りではありません。
準備したこと①:技術の基礎(理系の知識はそのまま使える)
組み込みはソフトとハードの両方に触れる仕事なので、基礎があるほど書類・面接で有利になります。
機械系で学んだC言語・電子回路・数学がそのまま使えた【体験談】
転職活動で一番助けられたのは、理系(機械系)のバックグラウンドでした。現職が組み込みそのものでなくても、これは強みになります。
私は大学・大学院でC言語の授業、制御工学、電子回路、基礎的な数学を学んでいました。組み込みの仕事に直結する分野ではありませんでしたが、いざ転職してみるとこの前提知識が想像以上に役立ちました。たとえば回路の処理をソフトで実現する場面では、微分・積分などの数学がそのまま使えます。「未経験」とはいえ、理系の前提知識がある人は本当のゼロからのスタートではありません。
組み込みで最も使う言語です。授業で書いた経験がそのまま実務につながります。
マイコンと回路で動く製品を扱うので、基本的な電子回路の知識があると仕様書が読めます。
制御ロジックの設計に直結します。学生時代に扱っていればそのまま話せます。
微分・積分の考え方に抵抗がないだけで、制御まわりの計算が読めます。
現職や専攻が組み込みと違っても、理系・ものづくりの知識があればアピール材料になります。まずは自分が学んできたことを「組み込みで使えそうか」という目で書き出してみてください。
もうひとつ、見落とされがちな点があります。組み込み系の求人には、応募の必須条件に「理系出身」「工学部卒」を挙げている企業が少なくありません。理系であれば、文系では応募すらできない求人にもエントリーできます。応募できる求人の幅そのものが広いということです。
未経験・文系が最低限そろえておきたい基礎
理系でなければ無理か、というとそんなことはありません。ただし、ゼロのまま応募するより、最低限の基礎を準備しておくほうが通過率は上がります。優先度の高い順に挙げます。
| 準備するもの | なぜ必要か | 到達レベルの目安 |
|---|---|---|
| C言語の基礎 | 組み込みで最も使う言語。学習意欲の証明にもなる | 変数・配列・関数・ポインタの基本がわかる |
| 電子回路の基礎 | マイコン+回路で動く製品の仕様を理解するため | 高校物理+ローパスフィルタ等の代表的な回路 |
| 数学(基礎) | 回路の処理をソフトに落とす場面で使う | 微分・積分の考え方に抵抗がない |
| 簡単な成果物 | 「手を動かした」証拠になり面接で話せる | 簡単なIoT製品(例:植物の自動水やり機)を作ってみる。データシートを読んでレジスタなど下回りの処理を触った経験があればなお良い。大学の研究での成果物があれば一番強い |
| SPI対策 | 未経験は基本的にポテンシャル採用なのでこれが低いとまず落ちる | 最低でも6割はほしいところ |
すべてを完璧にする必要はありません。学習を始めている事実そのものが、未経験者の本気度を示す材料になります。
文系の方や、理系でもC言語や回路を学んでこなかった方は事情が違います。上の表にある内容を「勉強しました」と言えるところまでは、面接の前にやっておいてください。
準備したこと②:技術以外で勝負できる強み
技術にまだ自信がない人も、あきらめる必要はありません。組み込みの現場では、技術以外のスキルも評価されます。
組み込みでもマネジメント・対人スキルは評価される
組み込みソフト開発は、1つの製品に数十人〜数百人が関わる大規模開発がほとんどです。そのため、作業の指示や進捗をまとめるマネジメント・対人スキルを持つ人は、現場で重宝されます。
技術力で勝負するのが難しいなら、前職で培ったチームをまとめた経験・調整力・コミュニケーション力を前面に押し出すのも有効です。技術が弱い分を、別の強みで補ってアピールするわけです。
私は面接で、「開発プロジェクトで2〜3人ほどの業務管理・業務指示・教育をしていた」経験を話したところ、これがかなり好評でした。組み込みは大人数で進める開発なので、人をまとめ、教える経験は技術と同じくらい価値があると実感しています。たとえ少人数でも、チームを動かした・後輩を指導したといった経験があるなら、アピール材料にしてください。
技術に自信がなくても通過率を上げる見せ方
書類・面接で大切なのは、「未経験です」で終わらせず、持っている強みを組み込みで活きる形に翻訳して伝えることです。同じ経歴でも、見せ方で印象は変わります。
- 前職の経験を書き出す:理系知識、ものづくり経験、品質へのこだわり、チーム調整など「組み込みで使えそうな点」を並べる
- 学習中の事実を具体的に書く:「C言語を学習中」より「実際に何かものづくりした」のほうが伝わる
- 志望動機を一貫させる:なぜ組み込みなのかを、自分の経歴と結びつけて語る(書き方は組込みエンジニアの志望動機の作り方にまとめました)
私が組み込みを選んだ理由は、Web系や基幹系よりも理系の知識が全面的に役立つと感じたからです。「工学部の強みを活かしつつソフト系に進みたい」という軸が一貫していたことは、面接でも話しやすく、納得感を持ってもらえたと感じています。
やらなくてよかったこと:転職“前”の資格集め【体験談】
未経験の転職記事では「資格を取る」がよく挙がります。資格そのものは学習意欲を示せますが、転職“前”にそろえる必要はありません。私の場合がそうでした。
私が転職“前”に机に向かってやった準備は、SPI(適性検査)の対策くらいです。対策本を1冊買って解いた程度でした。C言語や電子回路については面接で聞かれたりもしましたが、大学で学んだと回答してその後は特に深掘りもなかったです。理系のバックボーンがあると、特別な準備をしなくても戦えるのでそこは楽でした。
保有資格は応用情報技術者とC言語プログラミング能力認定試験1級ですが、どちらも入社後の業務で役立った資格です。転職“前”に取りそろえたものではありません。未経験のうちから資格をすべてそろえようと気負う必要はありません。
適性検査を選考に使う企業は多いので、対策本を1冊ひと通りやっておいてください。未経験はポテンシャル採用で、ここが低いと技術の話にたどり着く前に落ちます。技術の勉強だけに気を取られて、適性検査で落とされるのはもったいないところです。
応募先選びで準備したこと:SES企業の見極め方
未経験転職では、準備と同じくらい応募先選びが大事です。ここを軽視すると、入社しても組み込みエンジニアになれない、という事態が起こり得ます。
組み込み志望なのに設計職へ…実際に起きたミスマッチ【体験談】
SES企業のなかには、機械設計職やコールセンターなどの派遣も手広く扱っている会社があります。私の場合、組み込みエンジニアとして応募したのに、選考の途中で「設計職もあるけれど、設計職にアサインしてもいいか?」と打診された会社がありました。組み込みを志望して受けているのに、です。正直「めちゃくちゃだな」と思いましたが、選考の段階で確認してくれただけまだマシなほうです。入社後に「君はソフトじゃなく前職に近い業務をやって」と言われていたら、組み込みの実務経験が積めないまま時間が過ぎるところでした。
事業がソフト一本のSESなら大きな問題は起きにくいのですが、いろいろな職種の派遣を扱う会社は「とりあえず人を取って、空いている案件に当てる」傾向があります。組み込みで入ったつもりが別職種、という事故はここで起きます。そのため、「設計職もあるが…」と選考中に口にする会社は、組み込み一本で働ける環境かを慎重に見極めてください。
入社後に後悔しないための確認ポイント
ミスマッチを防ぐために、応募・選考の段階で必ず確認しておきたいポイントです。
| 確認すること | なぜ確認するか |
|---|---|
| 会社の業種・事業内容 | ソフト一本か、設計・コールセンター等の派遣も扱うかで安全度が変わる |
| 配属される職種が「組み込みソフト」か | 応募職種と実際の配属がズレないか確認する |
| 想定される案件・客先の領域 | 組み込み案件が実際にあるか、別職種に回される余地がないか |
| 「組み込みエンジニアとして採用される」言質 | 口頭でも確認しておくと、入社後のミスマッチを防げる |
とくに最後の「組み込みエンジニアとして採用される」言質を取っておくことは、実際に受けた立場からおすすめします。聞きにくいと感じるかもしれませんが、自分のキャリアを守るための正当な確認です。誠実な会社なら、はっきり答えてくれます。
- 設計職・コールセンター等、多職種の派遣も手広く扱っている
- 選考の途中で別職種(設計職など)を打診してくる
- 配属職種・担当案件の領域を明言しない
- 事業がソフト開発に特化している
- 組み込み案件の実績を具体的に説明できる
- 「組み込みエンジニアとして採用」と言質をくれる
【就活生向け】新卒で組み込みを目指すなら
ここまでは中途の転職の話です。新卒の就活生は、もう少し有利な条件で組み込みを目指せます。
中途の未経験ではメーカー系の書類が通りにくいと書きましたが、新卒採用はそもそも未経験を育てる前提です。そのため、新卒であればメーカー系も十分に狙えます。大学の授業で学んだC言語・電子回路・制御・数学といった知識は、そのまま就活で使えます。学生のうちにマイコンで簡単な成果物を作っておけば、面接で話せるネタにもなります。学ぶべき内容そのものは中途と共通です。
よくある質問(FAQ)
未経験でも本当に組み込みに転職できる?
できます。筆者もプログラミングほぼ未経験から車載組み込みへ転職しました。組み込み業界は慢性的な人手不足で、未経験歓迎の求人も一定数あります。ただし中途の場合、いきなりメーカー系は厳しいので、まずはSES・SIerやテスト評価の担当として実務経験を積むルートが現実的です。
文系・非理系でも大丈夫?
目指せます。理系の素養があると有利なのは事実ですが、必須ではありません。C言語や電子回路の基礎を少しずつ準備し、前職で培ったマネジメント・対人スキルなどを強みとしてアピールすれば勝負できます。詳しくは組込みエンジニアは文系でもなれる?公的データと現役が見た現場のリアルにまとめています。
資格は必要?
資格は必須ではありません。厚生労働省の職業情報でも、組み込みの入職に特定の学歴・資格は必要とされないと整理されています。筆者の場合、転職“前”にやった準備はSPI(適性検査)対策が中心で、応用情報技術者やC言語検定1級はむしろ入社後の業務で役立った資格でした。転職時点で無理にそろえる必要はありません。
SES企業はやめたほうがいい?
SES自体は、未経験が最初に入る先として有効です。やめる必要はありません。ただし、ソフト以外(設計職・コールセンター等)の派遣も幅広く扱う会社は、組み込み志望なのに別職種へ回されるリスクがあります。応募先の事業内容を確認し、組み込みエンジニアとして採用される言質を取ってください。
何社くらい応募すればいい?
明確な正解はありませんが、筆者は約50社に応募し、書類通過は12社でした。未経験は落ちて当たり前なので、1〜2社の不採用で落ち込まず、ある程度の母数を確保することをおすすめします。数を打ちつつ、通った企業をしっかり見極めるのが現実的です。
まとめ|転職前に準備すべきことチェックリスト
未経験から組み込みエンジニアへ転職する前に準備したことです。
- 未経験転職の現実と通過率を知っておく(落ちて当たり前・SES/SIerとテスト評価から入る)
- C言語・電子回路・数学など技術の基礎をそろえる
- 前職・理系の知識を「組み込みで活きる強み」として書き出す
- 技術に自信がなければマネジメント・対人スキルをアピール材料にする
- 資格集めは後回しにして、SPI(適性検査)の対策を1冊やる
- 応募先の業種・事業内容を必ず確認する
- 「組み込みエンジニアとして採用される」言質を取る
- 応募先企業を決める(数は多めに。私は約50社)
準備するものが決まったら、次は順番です
何をどの順番で学び、どう転職活動を進めるのか。私が実際にたどった道のりを一枚のロードマップにまとめました。準備は、順番を決めたところから進みます。