IoT機器やスマート家電の組込み求人。志望動機で「身近な製品を作りたい」と書きたくなる領域ですが、その一文はほぼ全員が書いています。

この記事のゴール

  • 「便利で身近だから」を、作る側の動機に置き換える
  • 評価される5つの理由から選び、生活の困りごとで具体化する
  • 未経験でも自分で1つ作れる領域。作れば志望動機はほぼ完成する

筆者の自作装置 部品代 4,000製作 約1ヶ月


だいき
現役の車載組込みソフトエンジニア
機械系のテストエンジニアから、プログラミングほぼ未経験で車載組込みソフトへ転職しました。いま担当しているのは車載ですが、転職活動のときに面接で一番効いたのは自分で作ったIoT機器の話でした。

この領域には、他の業種にはない強みがあります。未経験でも自分で1つ作れることです。作った経験が1つあると、志望動機はほぼ完成します。

これは新卒の就活でも同じで、むしろ時間を作りやすい学生のほうが有利な部分です。前職の話は学業や研究に読み替えて読み進めてください。学生が書く場合の文章の形は新卒向けの作例にあります。

「便利で身近だから」が弱く見える理由

身近さは、消費者としての感想です。志望動機で求められているのは、作る側としてその製品に何をしたいかという話になります。

IoT家電は、上位で紹介されている志望動機の例文にもよく登場します。エアコンのIoT化、消費電力の可視化、温度と湿度に応じた自動制御。読めば分かるとおり、書ける人はいくらでもいます。

だから差がつくのは、製品への感想ではなくその製品を必要とした具体的な場面です。誰が、どんなときに困っていて、それを機械でどう解決するのか。ここまで書けると、開発の仕事の入口に立った人の文章になります。

そして幸いなことに、IoTはその場面を自分で作れる領域です。数千円のマイコンボードとセンサーがあれば、生活の中の困りごとを1つ解決できます。

IoT・家電を志望する理由は、この5つから選ぶ

「暮らしを便利に」だけでは全員が書ける。誰のどの不便かまで下ろして初めて動機になる。

「便利で身近だから」を使わないとすると、何を書くのか。電気・家電業界の志望動機で実際に評価されているのは、次の5つです。

  1. 人の暮らしを便利で快適にしたい(誰の、どの不便かを名指しで)家族や身近な人の困りごとを具体的に挙げられる人
  2. 生活の基盤を支えている製品の中身を作りたい止まると生活が回らない製品に関心がある人
  3. 自分や家族が毎日触る物に、自分の書いたソフトを入れたい成果物が手元に残る仕事をしたい人
  4. 家がつながることで生活が変わる、その入口を作りたいスマホからの操作や自動制御を自分で試したことがある人
  5. AIのような新しい技術を、量産品として成立させたい実験ではなく、値段と品質が決まった製品に載せる仕事がしたい人

4を選ぶなら、具体例まで出してください。スマートフォンから家中のスイッチを操作する、住んでいる人の好みに合わせて温度が自動で変わる。こういう「変わった後の生活」が書けると、製品への感想とは別物になります。

5つとも、そのまま書くと弱い
どれも誰が、どの場面で困っているかを入れて初めて動機になります。「暮らしを便利にしたい」だけなら全員が書けます。次の章で、私が実際に使った作り方を出します。

生活の困りごとから作った話【体験談】

私が転職前に作ったものを紹介します。

祖父母のために作った、熱中症リスクの監視装置
部屋の温度と湿度から熱中症のリスクを監視して、危険な水準に近づいたら自動でエアコンの冷房を入れる装置を作りました。使ったのはArduino Uno R3と温湿度センサー、それに赤外線でエアコンを操作する部品です。部品代はボード込みで4,000円ほど、構想から完成まで約1ヶ月。

作った理由は2つあります。1つは面接でのアピール材料にするため。もう1つは、祖父母の熱中症対策になるものを一つ作りたかったからです。

中身の作り込みも書いておきます。危険とされる水準の2度ほど手前を作動の条件にして、5分おきに室温を取得し、温度がどちらへ向かっているかを見て設定温度を動かしていく方式にしました。エアコンには冷房の温度を上下させるボタンしかないので、実測値から判断するしかなかったからです。

一番苦労したのは、自動制御と人の操作の切り分けでした。人が消したエアコンを装置が勝手に付け直したら、ただの迷惑な機械になります。操作の優先度を人が上、装置が下と決めて、一定時間が経つまで装置は動かないという条件を作りました。この条件作りが本当に大変でした。

面接での反応
この話をしたとき、面接官から「実生活でそんなものを自作するなんて、組込みエンジニアへの意欲が高そうですね」と言われました。技術の高さを褒められたのではなく、生活の課題を自分で解いたことに反応があったのだと思っています。

後日談もあります。真夏にエアコンを付け忘れて出かけた日、帰宅後に装置の記録を抜き出して調べたら、装置が自動で冷房を入れた履歴が残っていました。命が救われたかどうかは分かりませんが、部屋の温度を危険な水準まで上げなかったのは確かです。

課題から志望動機を作る4ステップ

私の例をそのまま真似する必要はありません。手順だけ取り出すと、こうなります。

① 困りごとを1つ選ぶ
自分か家族が、生活の中で実際に困っていること
② 機械で解く形にする
何を測って、何を動かせば解決するかを決める
③ 小さく作りきる
数千円の部品で、動く状態まで完成させる
④ 志望動機へ移す
困りごと、工夫した点、応募先の製品領域をつなぐ

③で大事なのは、高度さではなく作りきることです。私が面接で話したのも、どんな場面を想定して、誤動作を防ぐためにどんな条件を入れたか、という作り込みの話でした。小さくても、考えて作って使っている。それが書ければ十分です。

実際に作るときの手順は、Arduino 基礎ドリルにドリル形式でまとめています。


// あわせて読みたい
Arduino 基礎ドリル(レジスタから学ぶ組込みマイコン入門)

IoT・家電向けの作例(置き換えるところつき)

作例 1異業種の未経験からIoT・家電の組込み求人へ応募する場合

① 結論
生活の中の困りごとを、製品として解決する側に回りたいと考え、組込みエンジニアを志望しました。
② 背景
きっかけは、離れて暮らす家族の室温管理でした。温湿度センサーとマイコンを使い、危険な水準に近づいたら自動で冷房を入れる装置を作ったところ、実際に作動した記録が残り、機械で生活を助けられることを実感しました。作るなかで一番難しかったのは、人の操作を装置が上書きしないための条件づくりです。
③ 接続
前職では◯◯を担当し、想定外の使われ方を洗い出して対策を考える作業を続けてきました。誤動作を防ぐ条件を考える作業は、その延長にあると感じています。
④-a 業界
生活の中の困りごとを製品で解決する領域に関わりたいと考えています。自分で作った装置が実際に家族の役に立ったことが、その理由です。
④-b 企業
貴社は△△といった生活家電を手がけられており、求人票にある□□の工程は、使う人の手間を減らす部分に直接関わると理解しています。
⑤ 入社後
入社後はまずC言語とマイコンの理解を業務レベルへ引き上げ、将来は生活の課題から機能を提案できるエンジニアになりたいと考えています。

これは作例です。②には自分が作ったもの、③には前職の経験、④-bには応募先の製品と担当工程を入れてください。④は「なぜこの業界か(④-a)」と「なぜこの会社か(④-b)」の2階層で、この記事が扱うのは④-aにあたる、IoT・家電を選んだ理由です。②が空欄になる場合は、先に何か1つ作ることを勧めます。この領域では、それが一番早い近道です。

5要素それぞれの意味と埋め方は、組込みエンジニアの志望動機の作り方に書いています。


// あわせて読みたい
組込みエンジニアの志望動機の作り方|未経験転職で使った例文つき

IoTでよくあるNGと直し方

やりがちな書き方 どう読まれるか
便利な製品を作りたいです 誰でも書ける。何が不便で、何を便利にするのかが無い
身近な家電に携われるのが魅力です 消費者の目線のまま。作る側の話になっていない
IoTはこれから伸びる分野だと思いました 業界予測で、自分の話になっていない
スマート家電を使っていて感動しました 使用者の感想。開発への関心につながっていない
クラウド連携やアプリ開発にも興味があります 組込みの求人でアプリ側を中心に書くと、応募職種とずれる
損をする書き方スマート家電を日常的に使っており、その便利さに感動しました。IoTはこれから伸びる分野でもあるため、身近な製品の開発に携わりたいと考えています。

直したあと離れて暮らす家族の室温が心配で、温湿度センサーとマイコンで自動的に冷房を入れる装置を自作しました。作るなかで難しかったのは、人が消したエアコンを装置が付け直さないための条件づくりです。生活の中の困りごとを、製品として届ける側に回りたいと考えています。

右側には「便利」も「感動」も入っていません。それでも、この人が何を面白いと感じているかは伝わります。

家電でも、不具合は軽くない

最後に、志望動機に入れると印象が変わる観点を1つ。

私は車載を担当していますが、家電も不具合の重さという点では変わらないと考えています。市場で不具合が出れば製品の故障や発火といった事故につながりますし、後からプログラムを書き換えられない製品も多い。組込みは分野を問わず、ミスが許されにくい仕事です。

IoT家電は身近で親しみやすい分、志望動機が消費者の感想に寄りやすい領域です。そこに作る側としての品質の意識を1文入れておくと、他の応募者と差がつきます。人が触ってバグが事故やけがにつながる製品は、AIに丸投げできる仕事でもありません。だからこそ人が作る意味がある、という書き方もできます。

よくある質問(FAQ)

何を作れば志望動機の材料になりますか?

生活の中で自分か家族が困っていることなら何でも構いません。温度、明るさ、人の出入り、水やり。センサーで測れて、何かを動かせば解決するものを1つ選んでください。私の装置も部品代4,000円ほど、制作は約1ヶ月でした。

作ったものの完成度が低くても書いていいですか?

書いてください。面接で聞かれるのは完成度ではなく、どんな場面を想定して、どんな工夫をしたかです。誤動作を防ぐために入れた条件の話は、それだけで作り込みの証拠になります。

クラウドやアプリの経験は書かないほうがいいですか?

中心に置かないでください。組込みの求人なので、機器側の話を中心に据えます。連携の経験があるなら、機器側の話を書いたうえで最後に一言添える程度が良いです。

作ったものの写真は必要ですか?

必須ではありません。私は写真も動画もコードも見せず、口頭で説明しただけでした。それでも十分に伝わっています。用意できるなら見せたほうが早いですが、無くても諦める必要はありません。

まとめ

IoT・スマート家電の組込み求人に出す志望動機の要点です。

  • 「便利」「身近」は消費者の感想。作る側の話に変える
  • 生活の困りごとを1つ選び、機械で解く形にして、小さく作りきる
  • 面接で聞かれるのは完成度ではなく、想定した場面と工夫した条件
  • 応募先の製品と担当工程を、自分が作ったものとつなげる
  • 家電でも不具合は軽くないという品質の意識を1文入れる

この領域は、未経験でも自分で作った証拠を持てる数少ない場所です。手を動かした1ヶ月が、そのまま志望動機になります。


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