「未経験から組込みエンジニアに、本当に転職できるの?」「するとしたら、何を準備すればいいんだろう?」そんな不安を抱える方へ、未経験から転職した私の実体験をもとに答えます。

結論、未経験からの組込み転職は十分に可能です。ただし、いきなり大手メーカーに入れるほど甘くはなく、「事前の準備」と「応募先の選び方」で結果が大きく変わります。そのため準備せずに数社受けて全滅し、あきらめてしまう人も少なくありません。

筆者は機械工学を専攻し(工学部 機械学科・修士卒)、新卒では自動車部品メーカーに機械系の職種として入社。そして社会人4年目のとき、プログラミングはほぼ未経験の状態から車載組込みソフトのエンジニアへ転職しました(転職活動の期間は約3〜4か月)。保有資格は応用情報技術者・C言語プログラミング能力認定試験1級ですが、これらは入社後の業務で役立った資格で、転職“前”に取りそろえたものではありません。

この記事では、その実体験をふまえて「未経験転職のリアルな通過率」「転職前に準備したこと」「失敗しない応募先の選び方」まで具体的に整理します。これから動き出す人が、ほかの応募者より一歩リードできる状態を目指します。

そもそも組込みエンジニアの仕事内容があいまいな方は、先に組込みエンジニアの仕事内容とは?Web系との違いを読むと、この記事の理解が深まります。

この記事で紹介する「転職前に準備したこと」
1. 未経験転職の「現実」と通過率を知っておく
2. C言語・電子回路・数学など「技術の基礎」をそろえる
3. 前職・理系の知識を「組込みで活きる強み」として棚卸しする
4. 技術に自信がなければマネジメント・対人スキルをアピール材料にする
5. 応募先の業種・事業内容を必ず確認する(SESの地雷回避)
6. 「組込みエンジニアとして採用される」言質を取る
7. 落ちる前提で応募数を確保する(私は約50社)

未経験から組込みに転職できる?50社応募でわかった現実

準備の話に入る前に、まず知っておいてほしい「現実」があります。ここを理解しているかどうかで、転職活動の作戦が変わるからです。

私の応募50社・書類通過12社の内訳【体験談】

未経験転職は「落ちて当たり前」。これが結論です。私自身の数字を正直に公開します。

<筆者の体験:応募50社した際の成績>
・応募した企業数:約50社
・書類選考を通過:12社(通過率およそ4社に1社)
・その大半が SES・SIerで、メーカー系はごくわずか

体感として、未経験の書類はSES・SIerのほうが圧倒的に通りやすく、メーカー系は未経験だとかなり厳しいという現実がありました。1〜2社落ちただけで「自分には無理だ」と落ち込む必要はありません。母数を確保して、通る企業から内定を取りにいく。これが未経験転職の基本戦略です。

図1:私の未経験転職「応募約50社」した際の成績

応募 約50社
▼ 書類選考(通過率およそ4社に1社)
書類通過 12社
▼ 通過した12社の内訳(体感)
SES・SIer
大半
メーカー系
ごくわずか
未経験の書類はSES・SIerのほうが通りやすく、メーカー系は狭き門。落ちて当たり前という前提で、応募の母数を確保するのが基本戦略。

いきなりメーカーは難しい。SES・SIerが現実的な入口

なぜメーカー系は通りにくいのか。理由はシンプルで、未経験者をゼロから育てる余裕がある企業ほど人気が集中し、競争率が上がるからです。新卒なら別ですが(後述)、中途の未経験はここで弾かれやすい。

用語メモ:
SES…システム開発の技術者を客先に派遣・常駐させて働く契約形態。未経験歓迎の入口になりやすい。
SIer(エスアイヤー)…システムの設計・開発を請け負う会社。
客先常駐…自社ではなく取引先のオフィスに常駐して働く働き方。

だからこそ現実的な戦略は、まずSES・SIerで組込みの実務経験を積み、その後にメーカー系へステップアップするルートです。実際、組込み(IoT含む)システムエンジニアは、厚生労働省の職業情報サイトでも「入職にあたって特に学歴や資格は必要とされない」と整理されており、入職後にスキルを身につける道が想定されています(参考:職業情報提供サイト job tag「システムエンジニア(組込み、IoT)」)。未経験でも入口は確かにあります。

準備したこと:技術の基礎固めと棚卸し(理系は有利)

ここからが本題の「準備したこと」です。まずは技術面。組込みはソフトとハードの両方に触れる仕事なので、基礎があるほど書類・面接で有利になります。

機械系で学んだC言語・電子回路・数学が武器に【体験談】

私が転職活動で一番助けられたのは、理系(機械系)のバックグラウンドでした。現職が組込みそのものでなくても、これは大きな武器になります。

<筆者の体験>
私は大学・大学院でC言語の授業、制御工学、電子回路、基礎的な数学を学んでいました。組込みの仕事に直結する分野ではありませんでしたが、いざ転職してみるとこの前提知識が想像以上に役立ったのです。
たとえば回路の処理をソフトで実現する場面では、微分・積分などの数学的素養がそのまま効いてきます。「未経験」とはいえ、理系の前提知識がある人は本当のゼロからのスタートではない。これは強調しておきたい点です。

つまり、現職や専攻が組込みと違っても、バックボーンに理系・ものづくりの知識があれば、それは立派なアピール材料になります。まずは自分が学んできたことを「組込みで使えそうか」という目で棚卸ししてみてください。

もうひとつ、見落とされがちな強みがあります。組込み系の求人には、応募の必須条件に「理系出身」「工学部卒」を挙げている企業が少なくありません。理系であれば、こうしたそもそも文系では応募すらできない求人にもエントリーできる。つまり、応募できる求人の幅そのものが広いのです。

図2:機械系で学んだ理系知識が「組込み」で活きる

C言語
ファームウェアの実装そのもの
電子回路
マイコンと回路で動く製品の仕様を読み解く
制御工学
モーター・センサーを動かす制御ロジック
数学
回路の処理をソフトで再現する計算(微分・積分)
専攻が組込みそのものでなくても、理系の知識があれば「本当のゼロからのスタートではない」という強みになる。

未経験・文系が最低限そろえておきたい基礎

「理系じゃないと無理なのか」というと、そんなことはありません。ただし、ゼロのまま応募するより、最低限の基礎を準備しておくほうが通過率は上がります。私の経験から、優先度の高い順に挙げます。

準備するもの なぜ必要か 到達レベルの目安
C言語の基礎 組込みで最も使う言語。学習意欲の証明にもなる 変数・配列・関数・ポインタの基本がわかる
電子回路の基礎 マイコン+回路で動く製品の仕様を理解するため 高校物理+ローパスフィルタ等の代表的な回路
数学(基礎) 回路の処理をソフトに落とす場面で効く 微分・積分の考え方に抵抗がない
簡単な成果物 「手を動かした」証拠になり面接で話せる 簡単なIoT製品(例:植物の自動水やり機)を作ってみる。データシートを読んでレジスタなど下回りの処理を触った経験があればなお良い。大学の研究での成果物があれば一番強い
SPI対策 未経験は基本的にポテンシャル採用なのでこれが低いとまず落ちる 最低でも6割はほしいところ

すべてを完璧にする必要はありません。「学習を始めている」事実そのものが、未経験者の本気度を示す材料になります。何をどの順番で学べばよいかは、未経験から組込みエンジニアになるまでの全体ロードマップで詳しくまとめています。

<筆者の体験:正直、準備らしい準備はSPI対策くらいだった>
正直に打ち明けると、私が転職“前”に机に向かってやった準備は、SPI(適性検査)の対策くらいです。対策本を1冊買って解いた程度でした。
私の場合は、C言語や電子回路については、面接では聞かれたりもしましたが、大学で学んだと回答してその後は特に深堀もなかったです。理系のバックボーンがあると、特別な準備をしなくても戦えるのでそこは楽だったなと思いました。
ただし、文系の方や理系でもC言語や回路を学んでこなかった方はある程度の知識はもったうえで面接に臨んだほうが無難なので、勉強しろとまでは言いませんが、表に記載した知識くらいは前もって勉強しましたと言えるくらいにはなったほうがいいかもしれないです。
ちなみに応用情報技術者やC言語検定1級は、入社後の業務で役立った資格で、転職“前”に必須だったわけではありません。未経験のうちから資格をすべてそろえようと気負いすぎなくて大丈夫です。

なお、SPIなどの適性検査を選考に使う企業は多いので、対策本を1冊ひと通りやっておくと安心です。技術の勉強だけに気を取られて、適性検査で足元をすくわれないようにしておきましょう。

準備したこと:技術以外で勝負できる強みの棚卸し

「技術にはまだ自信がない」という人も、あきらめる必要はありません。組込みの現場では、技術以外のスキルも確実に評価されます

組込みでもマネジメント・対人スキルは評価される

意外に思われるかもしれませんが、組込みソフト開発は1つの製品に数十人〜数百人が関わる大規模開発がほとんどです。そのため、作業の指示や進捗をまとめるマネジメント・対人スキルを持つ人は、現場で重宝されます。

技術力で勝負するのが難しいなら、前職で培ったチームをまとめた経験・調整力・コミュニケーション力を前面に押し出すのも有効な戦略です。技術が弱い分を、別の強みで補ってアピールするわけです。

<筆者の体験:管理経験は面接でかなり好評だった>
私は面接で、「開発プロジェクトで2〜3人ほどの業務管理・業務指示・教育をしていた」経験を話したところ、これがかなり好評でした。組込みは大人数で進める開発なので、人をまとめ、教える経験は技術と同じくらい価値があると実感しています。たとえ少人数でも、チームを動かした・後輩を指導したといった経験があるなら、ぜひアピール材料にしてください。

組込みエンジニアに求められるスキルの全体像(技術+マネジメント)は、未経験から組込みエンジニアになるまでの全体ロードマップでも整理しています。

技術に自信がなくても通過率を上げる見せ方

書類・面接で大切なのは、「未経験です」で終わらせず、持っている強みを“組込みで活きる形”に翻訳して伝えることです。同じ経歴でも、見せ方で印象は大きく変わります。

  • 前職の経験を棚卸しする:理系知識、ものづくり経験、品質へのこだわり、チーム調整など「組込みで使えそうな点」を書き出す
  • 学習中の事実を具体的に書く:「C言語を学習中」より「実際に何かものづくりした」のほうが伝わる
  • 志望動機を一貫させる:なぜ組込みなのかを、自分の経歴と結びつけて語る(書き方は組込みエンジニアの志望動機の作り方にまとめました)

<筆者の体験>
私が組込みを選んだのは、Web系や基幹系よりも理系の知識が全面的に役立つと感じたからです。「工学部の強みを活かしつつソフト系に進みたい」という軸が一貫していたことは、面接でも話しやすく、納得感を持ってもらえたと感じています。

応募先選びで準備したこと:SES企業の地雷を避ける

未経験転職で準備と同じくらい大事なのが「応募先選び」です。ここを軽視すると、せっかく入社しても組込みエンジニアになれない、という事態が起こり得ます。私が実際にヒヤッとした話を共有します。

組込み志望なのに設計職へ…実際に起きたミスマッチ【体験談】

<筆者の体験>
SES企業のなかには、事業がソフト一本ではなく、機械設計職やコールセンターなどの派遣も手広く扱っている会社があります。
私の場合、組込みエンジニアとして応募したのに、選考の途中で「設計職もあるけれど、設計職にアサインしてもいいか?」と打診された会社がありました。組込みを志望して受けているのに、です。正直「めちゃくちゃだな」と思いましたが、選考の段階で確認してくれただけ、まだマシなほうかもしれません。
これがもし入社後に「君はソフトじゃなく前職に近い業務をやって」と言われていたら、組込みエンジニアとしてのキャリアが汚れてしまうところでした。

事業がソフト一本のSESなら大きな問題は起きにくいのですが、いろいろな職種の派遣を扱う会社は「とりあえず人を取って、空いている案件に当てる」傾向があります。組込みで入ったつもりが別職種、という事故はここで起きます。だからこそ、「設計職もあるが…」と少しでも匂わせてくる会社は、組込み一本で働ける環境かを慎重に見極めるべきです。

入社後に後悔しないための確認ポイント

こうしたミスマッチを防ぐために、応募・選考の段階で必ず確認しておきたいポイントを表にまとめました。

確認すること なぜ確認するか
会社の業種・事業内容 ソフト一本か、設計・コールセンター等の派遣も扱うかで安全度が変わる
配属される職種が「組込みソフト」か 応募職種と実際の配属がズレないか確認する
想定される案件・客先の領域 組込み案件が実際にあるか、別職種に回される余地がないか
「組込みエンジニアとして採用される」言質 口頭でも確認しておくと、入社後のミスマッチを防げる

とくに最後の「組込みエンジニアとして採用されること」の言質を取っておくのは、私の経験上おすすめです。聞きにくいと感じるかもしれませんが、自分のキャリアを守るための正当な確認です。誠実な会社なら、はっきり答えてくれます。

図3:SES企業の「危険サイン」と「安全サイン」

⚠️ 危険サイン(要注意)

  • 設計職・コールセンター等、多職種の派遣も手広く扱う
  • 選考の途中で別職種(設計職など)を打診してくる
  • 配属職種・担当案件の領域を明言しない

✅ 安全サイン(見極めOK)

  • 事業がソフト開発に特化している
  • 組込み案件の実績を具体的に説明できる
  • 「組込みエンジニアとして採用」と言質をくれる
「設計職もあるが…」と少しでも匂わせる会社は、組込み一本で働ける環境かを慎重に確認する。

【就活生向け】新卒で組込みを目指すなら

ここまでは中途(社会人)の転職を前提に書いてきました。新卒の就活生は、もう少し有利な条件で組込みを目指せます

中途の未経験ではメーカー系の書類が通りにくいと書きましたが、新卒採用はそもそも「未経験を育てる前提」です。そのため、新卒であればメーカー系も十分に狙えます。大学の授業で学んだC言語・電子回路・制御・数学といった知識は、そのまま就活の武器。学生のうちにマイコンで簡単な成果物を作っておけば、面接で話せるネタにもなります。学ぶべき内容そのものは中途と共通なので、全体ロードマップを早めに押さえておくと、就活でも一歩リードできます。

まとめ|転職前に準備すべきことチェックリスト

最後に、未経験から組込みエンジニアへ転職する前に準備したことを、チェックリストとして振り返ります。

  • ☐ 未経験転職の現実と通過率を知っておく(落ちて当たり前・SES/SIerが入口)
  • C言語・電子回路・数学など技術の基礎をそろえる
  • ☐ 前職・理系の知識を「組込みで活きる強み」として棚卸しする
  • ☐ 技術に自信がなければマネジメント・対人スキルをアピール材料にする
  • ☐ 応募先の業種・事業内容を必ず確認する(SESの地雷回避)
  • 「組込みエンジニアとして採用される」言質を取る
  • ☐ 応募先企業を決める(数は多めに。私は約50社)

未経験でも、準備と応募先選びを丁寧にやれば、組込みエンジニアへの道は十分に開けます。次の一歩として、何をどの順番で学び、どう転職活動を進めるかをまとめた未経験から組込みエンジニアになるまでの全体ロードマップをぜひ読んでみてください。あなたの転職準備が、ここからもう一段進みます。

よくある質問(FAQ)

未経験でも本当に組込みに転職できる?

できます。筆者もプログラミングほぼ未経験から車載組込みへ転職しました。組込み業界は慢性的な人手不足で、未経験歓迎の求人も一定数あります。ただし中途の場合、いきなりメーカー系は厳しいので、まずはSES・SIerで実務経験を積むルートが現実的です。

文系・非理系でも大丈夫?

目指せます。理系の素養があると有利なのは事実ですが、必須ではありません。C言語や電子回路の基礎を少しずつ準備し、前職で培ったマネジメント・対人スキルなどを強みとしてアピールすれば、十分に勝負できます。

資格は必要?

資格は必須ではありません。厚生労働省の職業情報でも、組込みの入職に特定の学歴・資格は必要とされないと整理されています。筆者の場合、転職“前”にやった準備はSPI(適性検査)対策が中心で、応用情報技術者やC言語検定1級はむしろ入社後の業務で役立った資格でした。資格は「あれば学習意欲を示せる」程度に考え、転職時点で無理にそろえる必要はありません。

SES企業はやめたほうがいい?

SES自体は、未経験の入口として有効です。やめる必要はありません。ただし、ソフト以外(設計職・コールセンター等)の派遣も幅広く扱う会社は、組込み志望なのに別職種へ回されるリスクがあります。応募先の事業内容を確認し、組込みエンジニアとして採用される言質を取ることが大切です。

何社くらい応募すればいい?

明確な正解はありませんが、筆者は約50社に応募し、書類通過は12社でした。未経験は落ちて当たり前なので、1〜2社の不採用で落ち込まず、ある程度の母数を確保することをおすすめします。数を打ちつつ、通った企業をしっかり見極めるのが現実的です。