この記事は「組込みエンジニアに将来性はあるのか」が気になって、目指すか(あるいは続けるか)を迷っている人に向けたものです。「オワコン」「AIに奪われる」といった言葉を見ると、これから飛び込んでいいのか不安になるのは当然だと思います。

結論から申し上げると組込みの将来性は高いです。国のデータでも需要は伸びていますし、現場にいる私の実感でも仕事はむしろ増えています。ただし「どの分野でも安泰」という話ではなく、伸びる側にいるための分野選びとスキルの広げ方は必要です。そこまで含めて、正直に書きます。

<自己紹介>筆者は機械系のテストエンジニアから、プログラミングほぼ未経験で車載組込みソフトの現場に転職した、現役の車載組込みソフトエンジニアです。開発では日常的にAI(GitHub Copilotなど)も使っています。データと、現場で私が感じていることの両方から回答します。

結論:将来性は高い。ただし分野を選ぶ目は要る

組込みの需要は、国の調査でも、車載の開発現場にいる私の体感でも伸びています。「オワコン」ではありません。ただしAIで置き換わっていく仕事もあるので、伸びる分野に身を置き、技術を広げ続ける人ほど強い、というのが正直なところです。

将来性の話は、個人の主観や意見のみで語られがちです。そこでこの記事では、まず公的なデータで需要側がどうなっているかを確かめ、次に現場にいる私が実際どう感じているかを重ねます。結論を先に3つの見方で整理すると、次のようになります。

見るところ 私の結論
公的データ(需要) 人材不足は続く見通し。組込み・IoTは需要が高い分野に挙がる
現場の実感 開発スピード激化に伴い、仕事はむしろ増えている
実際に落ち目になりそう 定型作業はAIで縮小。分野とスキル次第で差がつく

このあと、この3つを順番に見ていきます。データだけでも、私の感想だけでも、将来性は判断できません。両方をつき合わせて、あなたが「目指してよいか(続けてよいか)」を判断できるような記事を書きました。

なぜ「将来性がない」「オワコン」と言われるのか

最初に、否定的な意見が出てくる理由をお話しします。ここを飛ばして「大丈夫です」とだけ言われても、不安は消えないからです。

よく見かけるのは、次のような声です。組込みはC言語のような昔からある技術を使うので「枯れた地味な分野」に見える。ハードウェアも絡んで学ぶことが多いわりに、給料が跳ね上がるわけではない。そして最近は「どうせAIがコードを書くから、プログラマーは要らなくなる」という不安です。

どれも、まったくの的外れではありません。地味な面はあるし、最初の年収が高いわけでもない。実際にいくらなのかは組込みエンジニアの年収の記事で、公的データと私の給料の内訳をまとめています。ただ、これらが「だから将来性がない」に直結するかというと、私はそうは思いません。以下で、需要のデータと現場の実感から、一つずつ見ていきます。

データで見る需要:組込みの仕事はむしろ増えている

まず、印象ではなく数字です。

国(経済産業省)の調査では、2030年にはIT人材が最大で約79万人足りなくなると見込まれています。これはIT全体の数字で、組込みはその一部ではありますが、人材が余るどころか大きく不足する方向だということです。少し先の予測だけでなく、今この瞬間の逼迫もあります。IPAの調査では、国内企業の半数以上が「IT人材が大幅に足りない」と答えています。

79万人
2030年に不足するIT人材(最大)
経産省調査。IT全体の推計
58.5
IT人材が大幅に足りないと答えた企業
IPA『DX動向2025』

エンジニアの採用は今も売り手市場で、情報通信系の求人は求職者の数を上回る状態が続いています。組込みに絞っても、需要が高い分野として名前が挙がります。エンジニアの需要を分野別に整理した調査では、AIやクラウドと並んで「組み込み・IoT」が高需要の領域に入っています。

そして私の専門である車載は、今まさに大きく動いています。クルマの価値をソフトウェアで決める「SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)」への移行が進み、関連する市場は2024年からの数年で数倍規模に伸びるという予測もあります。あらゆる機器がネットにつながるIoTの広がりも合わせると、組込みソフトを書ける人が急に余る未来は、少なくとも数字の上では見えません。

このあたりの、クルマがソフトウェア中心の開発に変わってきている話は、車載の仕事内容の記事でも触れています。


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車載組込みソフトとは?自動車のソフトウェア開発の仕事内容

現場の実感:仕事が減る気配がない

データは「需要は強い」と言っています。では、現場にいる私の体感はどうか。正直に言うと、仕事は減るどころか増えています。

ただ、「仕事が増えている」という言い方は少し正確ではないかもしれません。私の感覚では、増えているのは仕事量そのものというより開発のスピードです。自動車は新しい製品が次々と出て、新しい規格への対応も求められます。開発が速く回るようになったぶん、それを支えるだけの人手が結局は足りない。だから忙しい、というのが肌感です。

現場で感じていること
「AIが来たから仕事が消える」という空気は、少なくとも私のまわりにはありません。むしろ新しい製品や規格への対応で人手が足りない状態が続いています。開発が速くなったぶん、対応する人がもっと要る、という感覚です。

そしてこの「人が足りない」状態は、働く側から見ると市場価値の高さにつながります。私が前職から転職して一番実感したのが、この市場価値の変化でした。技術力のある組込み人材は慢性的に足りないので、ここでキャリアを積むこと自体が資産になります。「最悪、ほかの会社でも働ける」という感覚は、日々の安心感までかなり変えてくれました。

必要な知識や技術が膨大なぶん大変ですが、毎年ちゃんと成長している実感が得られるのもこの仕事の良いところです。技術が積み上がるほど価値が上がる仕事なので、「学び続ければ、その分だけ返ってくる」という手応えがあります。地味だから将来性がない、という話とは、私の実感はむしろ逆です。

「AIに奪われる」は本当か

将来性の話で今いちばん不安が強いのが、ここだと思います。私は開発でGithub CopilotなどのAIを実際に使っているので、使ってみた上での実感を書きます。

先に言ってしまうと、今の段階で組込みの仕事が丸ごとAIに置き換わる感覚はありません。理由は、扱っている製品の性質にあります。自動車のように要求の厳しい製品は、書いたソフトを必ず人の目で確かめないと世に出せません。AIに丸投げして終わり、というのは、この業界ではあり得ないです。IoT製品でも、人が触れて、不具合が事故やけがにつながるようなものは同じで、簡単にAI任せにはできません。

AIが得意なところ・人が要るところ
定型的なコードを書く、決まった観点でチェックするといった作業は、AIがかなり肩代わりしてくれます。一方で、実機で動かして確かめる、ハードの制約と折り合いをつける、膨大な仕様を読み解いて要件をすり合わせる、といった部分は人が担うところです。丸ごと置き換わるのではなく、人がやる範囲が上流に寄っていく、という感覚が近いです。

ただし、楽観だけで終わらせるつもりはありません。丸投げは無理でも、効率化は確実に進みます。今まで3人がかりだった仕事が1人で回るようになれば、採用の伸びが鈍る場面は今後出てくるかもしれません。だからこそ、目指すと決めているなら、動くのは早いほどいいと私は思います。

もう一つ、AIの影響が大きく出そうなのが、開発を外に出す形の仕事です。国が2025年にまとめたデジタル人材育成の報告書でも、これからは人とAIが一緒に価値をつくる形へ進み、開発は内製化に向かうと指摘されています。効率化やAI活用で自社開発(内製)がしやすくなったぶん、SIerやSESといった外注中心のビジネスは、今後きびしくなる面があるかもしれません。この点は、次の「どこに身を置くか」の話につながります。

正直な話:伸びる分野と、需要が減る仕事

「将来性がある」で押し切る記事にはしたくないので、影の部分も書きます。同じ組込みでも、伸びる仕事と縮んでいく仕事があります。

エンジニアの需要を扱った調査でも共通して指摘されているのが、「単純なテストだけ」「決まった運用を回すだけ」「古い技術に張り付いているだけ」の仕事は、これから需要が減っていくという点です。組込みでも、私はここは当たっていると思います。AIは単純作業や、決まった観点での静的なチェックが得意なので、定型の作業から順に置き換わっていくとみています。裏を返せば、そこに留まらず技術を広げていける人は、当分困りません。

国の報告書も「学び続ける前提」だと言っている
経済産業省が2025年にまとめたデジタル人材育成の報告書は、生成AIでスキルの古くなるスピードが速まり、2030年に必要とされるスキルのうち7割超が「今はまだ新しいスキル」になると見込んでいます。実際、半数近くのITエンジニアが、自分のスキルが古くなることに不安を抱えているというデータもあります。怖い話に聞こえますが、裏を返せば、学び続けられる人ほど有利だということです。ここは組込みも例外ではありません。
伸びる側(身を置きたい)車載やIoTなど、ソフトウェアで製品価値を作っていく分野。実機やハードの制約とセットで設計できる、原因を追って直せる、といった「機械には任せきれない」力を持つ人。分野そのものより、複数の領域にまたがって動ける幅が効いてきます。
きびしくなりやすい側決まったテストや運用だけを、決まったやり方で回し続ける仕事。一つの機能や古い技術だけに張り付いて、そこから外に広げようとしないポジション。ここはAIの効率化がそのまま効いてくる領域だと感じます。

では、これから目指す人はどの分野を選べばいいのか。私の考えでは、車載でもIoTでも、分野そのものはどこでも構いません。それより重要なのは、どんな会社(業界)に入るかです。

分野より「どこに入るか」
私がおすすめするのは、製品を自分たちで作っているメーカーです。自社で開発を持っている会社は、AIで内製がしやすくなる流れの追い風を受けやすいからです。とはいえ未経験でいきなりメーカーは難しいことも多いので、まずSIerやSESで経験を積んでからメーカーへ移る、という順番でも十分だと思います。
最終的にメーカーを目指すという目標から逆算しての人生設計をするのが重要だと私は思います。

最後に、AI時代の将来性で一番勘違いされやすい点を書いておきます。「AIが書くなら、もう技術力は要らない」というのは逆です。AIが出してきたコードが正しいかを判断するにも技術が要りますし、AIに的確な指示を出すにも、こちらに知識がないと見当違いの答えを引くだけで時間とコストがかかります。古い技術(レガシー)だろうと新しい技術だろうと、技術は技術です。AIを使いこなす前提として、まず自分に技術を積むことが、人材価値が高くなります。

将来性を活かすなら、何から始めるか

ここまでで「需要はある。伸びる側に身を置けばいい」と思えたなら、次は動き方です。

将来性の話でよく「今は待ちどきか、動きどきか」と聞かれますが、私の答えは「今動くのが一番」です。タイミングを待つ必要はありません。そもそも転職活動は、在職中に進めるなら、たとえ内定が出なくても今の仕事を続けるだけで、失うものはありません。動かない理由の方が、実は見当たらないんです。

未経験からどういう順番で学び、どう転職まで持っていくかは、全体像を一枚にまとめた記事があります。まずはここから読むのがおすすめです。


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よくある質問(FAQ)

組込みエンジニアは本当にオワコンではないですか?

オワコンではありません。IT人材の不足は国の調査でも続く見通しで、需要が高い分野には組込み・IoTも挙がっています。私の現場でも、新しい製品や規格への対応で人手はむしろ足りていません。ただし「どの仕事でも安泰」ではないので、伸びる分野に身を置くことは意識してください。

未経験でも、今から目指して需要はありますか?

あります。人手が足りない業界なので、伸びしろを見て未経験を採る会社は実際にあります。私自身がプログラミングほぼ未経験の機械系出身から転職しました。効率化で採用が鈍る可能性を考えると、目指すなら早く動く方が有利です。

AIで組込みの仕事はなくなりませんか?

丸ごとなくなる感覚は、実際にAIを使っている私にはありません。要求の厳しい製品は必ず人の目を通しますし、実機やハードの制約を扱う部分は人が担います。ただ定型作業は効率化されるので、そこに留まらず技術を広げていくことが大事です。

どの分野を選ぶと将来性がありますか?

車載でもIoTでも、分野そのものはどれでも構わないと思います。それよりも、製品を自分たちで作っているメーカーに身を置けるかどうかの方が効いてきます。未経験なら、まずSIerやSESで経験を積んでからメーカーへ移る道でも十分です。

まとめ|「将来性がないから避ける」ではもったいない

組込みの将来性は、データでも現場でも十分にあります。人材は不足が続く見通しで、車載のソフトウェア化やIoTで需要はむしろ広がっています。私の現場でも、仕事が減る気配はありません。

もちろん「どの仕事でも安泰」ではなく、定型作業はAIに置き換わっていきます。だからこそ、伸びる分野に身を置いて技術を広げ続ける人ほど強い。そしてAIを使いこなすためにも、技術力そのものが今まで以上に必要になります。「将来性がない」の一言で足を止めてしまうのは、正直もったいないです。次にやることは、全体の道のりを知って、最初の一歩を決めることだと思います。

需要があるうちに、道のりを確かめてみる

将来性があると思えたら、次は未経験からの学習と転職の全体像です。私が実際にたどった順番を、一枚のロードマップにまとめました。動くなら早いほど有利です。

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