「いまの仕事はソフトウェアと無関係。それでも組込みエンジニアになれるのか」。この記事は、その疑問に実際に異業種転職をした私が回答します。

<自己紹介>筆者は機械系のテストエンジニアから、プログラミングほぼ未経験で車載組込みソフトエンジニアへ転職した、現役の車載組込みエンジニアです。異業種から実際に飛び込んだ立場で、正直なところを書きます。

異業種からでも組込みエンジニアは目指せます。これが実際に転職した私の結論です。20代後半、自動車部品メーカーで機械系のテストエンジニアをしていたところから、車載組込みソフトの世界に移りました。そのときの転職体験談を記事にしました。

50
応募
6
面接
3
内定
3〜4ヶ月
活動期間
在職中に活動

ただ「誰でも簡単になれる」とは言いません。異業種転職には、前職の経験が思った以上に武器になる場面と、完全にゼロから覚え直す場面の両方があります。この記事では「何が活きて、何がゼロからだったか」「どんな準備をしたか」「どこでつまずいたか」までを記事にしています。

結論:異業種からでも組込みエンジニアは目指せる

組込み業界は「入社後に覚える」前提で未経験者を採用する世界です。異業種出身であること自体は、想像しているほどのハンデになりません。

まず知っておいてほしいのは、組込みエンジニアの現場が「入社時点の完成度」より「入社後の伸びしろ」を見ているという事実です。現場で必要になる知識の多くは、開発ツールの使い方やプロジェクト固有のルールなど、そもそも入社前には学びようがない企業ノウハウだからです。仕事の内容や労働条件の公的な情報は、厚生労働省の職業情報サイトjob tag(組込みソフトウェア技術者)でも確認できます。

実際、私の職場にも異業種出身の組込みエンジニアはいます。理系出身に比べれば数は少ないものの、めずらしい存在ではありません。人手不足の業界なので、採用の幅を広げるために文系から採用している企業もあります。

応募前にここだけ確認
一方で、募集要項で応募資格を「理系出身者」に絞っている企業も多いのが実情です。異業種・文系から応募するときは、応募資格の欄を必ず確認してください。ここを見落とすと、書類で落ち続けて時間を失います。

私の転職の全体像(機械系テストエンジニアから車載組込みへ)

私の経歴を簡単に書きます。工学部の機械学科を出て、新卒で自動車部品メーカーに機械系のテストエンジニアとして入社。製品の評価や不具合解析を約4年担当したあと、20代後半で車載組込みソフトエンジニアへ転職しました。転職先である車載組込みの仕事内容そのものは車載組込みソフトとは?の記事で詳しく書いています。

転職を決めた理由はシンプルで、「ものづくりのエンジニアとして生き残るため」でした。EV化やIoT化が進むなかで、これからのものづくりには電動化とITの知識を持った人材が求められる。それなら、機械の知識を活かしながら両方に踏み込める組込みエンジニアが自分の答えだと考えました。

面接で実際に話した志望理由
「これまで機械製品のものづくりに携わってきたが、今後のものづくりエンジニアには電動化とITの知識が求められている。生き残るためにその両方を手に入れたい。機械系の知識を活かせる組込みエンジニアを志望した」。この筋を、どの面接でも一貫して話しました。車載業界自体がいまはソフトウェア中心の開発に移っていることも、追い風として伝えています。
要は、転職する理由への納得感をしっかり作り込み、「思いつきで転職したわけじゃないの?」という疑問を持たせないよう、ストーリーづくりをして面接に臨んだということです。

この筋を応募書類の文章に落とす手順は、別記事にまとめました。機械・電気系の出身なら、職種別の例文がそのまま使えます。


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機械・電気系から組込みエンジニアを志望する動機の書き方|職種別の例文5本

なお、書類の書き方や応募先の選び方など転職活動の具体的な準備は、別記事に詳しくまとめています。


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未経験から組込みエンジニア転職になるには?|未経験転職した私が解説

異業種の経験は何が活きて、何がゼロからか

異業種転職では「経験が活きる部分」と「ゼロからスタートする部分」がはっきり分かれます。まず、前職の経験がそのまま通用したのはこの3つでした。

1
不具合解決・問題解決能力

前職で製品評価をしていたので、この力をアピールしました。組込みエンジニアはモノを開発する仕事で、バグや不具合はどうしても発生します。そのときに不具合解決・問題解決の力が役立つと考えたからです。

2
段取り・進行の力

前工程・後工程を意識してプロジェクトを進める力。組込み開発は規模の大きいプロジェクトも多く、複数人で作業します。プロジェクトリーダーの経験や、後輩の指導・育成をした経験は、アピールポイントになると考えました。

3
ハードの理解

組込みエンジニアは実際のモノにソフトを組み込みます。前職で培った機械工学の知識も活きると考え、アピールしました。

ダイアグ
車の故障診断機能のこと。車載ソフト開発では避けて通れない領域。
実務で「前職が活きた」と感じた場面
前職で製品の不具合解析をしていたので、その経験は組込みの不具合対応でそのまま役立ちました。製品を扱う以上、故障はつきものです。「故障したら何に影響するか」「原因をどう追うか」という考え方は、対象がハードからソフトに移っても変わりませんでした。

逆にゼロから覚え直したのは、ソフト固有の概念です。特にメモリのアドレスを理解するまでは苦労しましたし、マイコンの機能は量が膨大で、車載特有のCANやダイアグも覚えることの連続でした。ここは正直、入社後に一つずつ潰していくしかありません。入社後の1年目に具体的に何へ戸惑い、どう乗り越えたかは組込みエンジニアは未経験にはきつい?入社1年目で戸惑ったことにまとめました。

それでも断言できるのは、異業種の経験は辞めた瞬間に消えるものではないということです。差がつくのは経験の有無ではなく、自分の経験を組込みの仕事に「接続」して語れるかどうか。私は職務経歴書でも面接でも、「不具合解析で製品仕様を把握する力がつき、それを評価されて新規製品の開発を任された」という前職の実績を、組込みでも通用する力として翻訳して伝えました。

異業種から目指す人の準備(私がやった学習ルート)

準備としてやったことは、実はそれほど多くありません。

私の場合、C言語の基礎を書籍とUdemyで約2週間学び、その後の約1か月はArduinoでの作品づくりに全部使いました。作ったのは「熱中症リスク監視システム」。部屋の温湿度から暑さのリスクを監視して、警告レベルが「危険」に達したら自動でエアコンの冷房を入れる仕組みです。部品代はボード込みで4,000円ほどでした。

なぜ座学より作品づくりに時間を振ったか。面接で語れるのは、覚えた知識ではなく作ったものだからです。実際この成果物の話は面接で一番反応がよく、ある面接官には「実生活でそんなものを自作するなんて、本当に組込みエンジニアになりたいんですね」という言葉までもらえました。

詰め込んだ知識量より、動くものを1つ完成させた事実のほうが、未経験者の熱意と地力をはるかに雄弁に証明してくれます。異業種から目指すなら、最低限そろえたいのはこの4つです。

  • C言語の基礎(変数・条件分岐・繰り返し・関数)を書籍かUdemyでひと通り触れた
  • Arduinoなどで「動くもの」を1つ完成させた
  • 作った理由と工夫した点を、自分の言葉で説明できる
  • 前職の経験を「組込みでどう活きるか」に翻訳して語れる

注意点:私が面接で落ちた質問と、求人の落とし穴

うまくいった話だけでは公平でないので、失敗も書きます。

正直に答えて落ちた面接
経験者と未経験者を同じ枠で募集している求人に応募したとき、「あなたが経験者に勝てる要素は何ですか」と聞かれて詰まりました。内心「勝てるわけないじゃん」と思ったし、実際に「技術では経験者の方には勝てません」と正直に答えて、その会社は落ちました。

いま振り返れば、この質問は技術力の勝負を求めていたのではなく、「未経験なりの戦い方を自覚しているか」を見ていたのだと思います。技術で勝てないのは面接官も承知のうえ。だからこそ答えるべきだったのは、前職で培ったマネジメント力や、資格・成果物が示す学習能力といった、経験者にはない自分の強みでした。経験者と技術力で正面から張り合わない。これが異業種転職の面接で私が学んだことです。

この質問以外に面接で実際に聞かれたことと、私がどう答えたかは別記事にまとめています。異業種から目指すなら、想定問答を先に見ておくと落ち着いて臨めます。


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組込みエンジニアの面接で実際に聞かれた質問

もう1つの注意点は、先ほども触れた求人の応募資格。理系限定の求人に気づかず応募し続けると、実力と関係なく落ち続けます。ハードウェアの知識や数学に強い苦手意識がある方も、入社後にその部分で苦労しやすいでしょう。組込みは電気や物理と地続きの世界だからです。この向き不向きは、こちらの記事でもう少し踏み込んで書きました。


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「組込みエンジニアはやめとけ」は本当か?向いてる人・やめた方がいい人

よくある質問(FAQ)

文系・非理系からでも目指せますか?

目指せます。私の周囲にも、数は多くないものの文系出身の組込みエンジニアがいますし、採用の幅を文系まで広げている企業もあります。ただし理系限定の求人が多いのも事実なので、応募資格の確認だけは徹底してください。文系から目指す場合の募集の選び方と、学部の代わりに何を示すのかは組込みエンジニアは文系でもなれるかの記事で詳しくまとめました。

プログラミング完全未経験でも大丈夫ですか?

私も転職を決めた時点ではほぼ未経験でした。書籍とUdemyで基礎を2週間、そのあと1か月で作品を1つ。このくらいの準備でも、面接で語れる材料としては十分に機能しました。大事なのは学習期間の長さではなく「動くものを作りきった」事実です。

転職で年収は下がりませんか?

私の場合はほぼ横ばい(約450万円)でした。未経験転職では一時的に下がるケースも聞きますが、組込みは経験を積んだ人材の需要が高い分野なので、長い目で見れば回収しやすい投資だと考えています。

まとめ|異業種経験は「接続」すれば武器になる

最後に、この記事の要点をまとめます。

  • 組込み業界は「入社後に覚える」前提。異業種出身はハンデになりにくい
  • 前職の経験は消えない。不具合解決・マネジメントなど「接続」できるものを棚卸しする
  • 準備は基礎2週間+作品1か月で戦える。作品が面接で一番効く
  • 経験者と技術力で正面から張り合わない。伸びしろと学習能力で勝負する
  • 応募資格(理系限定かどうか)だけは必ず確認する

ひとつ本音を付け加えると、転職して数年たったいま思うのは「異業種の4年間は遠回りではなかった」ということです。むしろ前職の解析経験があったからこそ、いまの不具合解析を得意領域にできました。あなたの経験にも、必ず接続点があります。

次の一歩は、転職までの全体の道のりを掴むことです。学習から内定までの流れを下の記事にまとめています。


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