組み込みエンジニア転職ロードマップ|未経験から4段階で解説
未経験でも組込みエンジニアにはなれます。ただし、何も対策や勉強もせずに転職活動をしても組込みエンジニアになるのはとても難しいです。未経験から組込みエンジニアになるまでの道のりを、実際に通った順に「4つの段階」へ整理しました。
- 未経験から組込みエンジニアになるまでの4つの段階
- 転職前にどこまで勉強すればいいか(C言語→マイコン)
- 採用で求められたスキル・求められなかったスキル
目次
全体像:未経験から組込みエンジニアになる4つの段階
未経験からのおおまかな流れは次のとおりです。まずここで全体像をつかんでください。

- 段階1転職の準備
C言語に少し触れる、SPI対策、職務経歴の整理。準備の中身は未経験から組込みエンジニアに転職する前に準備したことで詳しく解説しています。
- 段階2転職活動・内定
未経験入社可の企業へ複数応募します。見られるのは技術力より、前職での取り組みでした。
- 段階3入社・研修
ここで初めて本格的にプログラミングを学びます。未経験採用の会社は、入社後に教育する前提です。
- 段階4現場配属・実務
チーム開発、ドキュメント、製品知識を現場で身につけていきます。
そもそも「組込みエンジニアってどんな仕事?」という段階の方は、先にこちらを読むと全体像がつながりやすいです。
そもそも目指すかどうかで迷っている段階なら、先に判断材料をそろえたほうが早いです。「やめとけ」は本当か、年収はいくらか、将来性はあるのか、文系でもなれるのかを、それぞれ公的データと私の実体験でまとめています。
段階1:転職の準備(学習・SPI・職務経歴の整理)
この段階のゴールは、「面接で学習意欲を示せる状態」を作ることです。完璧な知識は要りません。
ただし無知な状態で面接に臨むと、面接官に「やる気がない」「学習意欲の低い人」と捉えられる可能性が高いです。エンジニア職に就く以上、ある程度の学習意欲は見られます。転職活動の前に、最低限の学習はしておきましょう。
独学での勉強法|学ぶ順番はC言語→マイコンでモノづくり
転職前の学習は、次の順番で進めるのがおすすめです。
- C言語(最優先):組込みはハードを直接制御するため、メモリやハードを細かく扱えるCが今も主流。
- マイコンを使ったモノづくり:組込みエンジニアはマイコンを使って製品をつくるので、実際に手を動かすと知識がつくうえ、自分の手で作った成果物は面接での最大のアピール材料になります。

なぜ組込みでC言語が中心なのかは、組込みでC言語が使われる理由で掘り下げます。C言語は読むだけでなく手を動かすと定着が早いので、練習問題で固めたい方向けに基礎ドリルを用意しています。
マイコンはArduinoを使うのが定番です。環境づくりはArduino IDEのダウンロード〜インストール完全ガイドから始めるのが手軽で、教材にはLチカからレジスタ操作まで手を動かして学べるArduino基礎ドリルがあります。
筆者が実際にやったこと
資格はなくても転職できましたが、あったほうがないより間違いなくいいです。余裕がある方は、転職活動を止めずに並行して資格試験を受けることをお勧めします。
段階1の到達チェック
- SPI対策で足切りを突破できる状態にした
- C言語に少し触れて「拒否反応がない」状態を作った
- マイコンに実際に触れて、組込みエンジニアの仕事のイメージがついた
段階2:転職活動・内定(採用で見られたこと)
準備ができたら応募に移ります。採用にあたり、面接官の受けが良かったところと、特に求められなかったスキルをまとめました。
採用で求められたスキル・求められなかったスキル

未経験者を採用しようとしている会社は、最初から高いプログラミングスキルを期待していません。「研修や入社後にちゃんと教育するので、そこで覚えてください」というスタンスがほとんどでした。なので、「完璧にC言語をマスターしてから応募しよう」と何ヶ月も足踏みする必要はありません。基本的な制御構文とポインタの理解くらいをしていただければ大丈夫かと思います。
これは私の体感だけの話ではありません。厚生労働省の職業情報サイトでも、組込み(IoT含む)のシステムエンジニアは「入職にあたって特に学歴や資格は必要とされない」職種として整理されています。
参考:職業情報提供サイト job tag「システムエンジニア(組込み、IoT)」
では、何を見られるのか。
つまり、現時点の技術力そのものより「この人は入社後に伸びそうか」「一緒に働けそうか」を見られていました。
面接時に私がアピールし、面接官へ好印象だった内容は次の2つです。
「設計書をきれいに書く力」は、ソフトに限らずどんな仕事でも必須スキルです。資料作成能力がある方はぜひアピールしてください!
面接で実際にどんな質問が飛んできたのかは、答えに詰まったものまで含めて別記事に残しました。
未経験歓迎の求人をどう探すか(使った転職エージェント3社)
求人サイトで自分で探す方法もありますが、私は転職エージェントを使いました。結果として、内定はすべてエージェント経由です。使ったのは次の3社です。
3社とも使ってよかったので、後悔したところは特にありません。ただし同じ求人を複数のエージェントから紹介されることはあるので、応募先が重ならないように管理は必要でした。
理由は、エージェント経由の内定は辞退がしづらいからです。たとえば志望度2位の会社から先に内定が出て、1位がまだ選考中という場面。同じエージェントで両方を進めていると、1位の選考を辞退して2位で決めるよう促されかねません。エージェントを分けておくと、この心配がなくなります。
なお、内定を承諾してから辞退するのは関係を壊す奥の手で、以後そのエージェントは使いにくくなります。私は志望度1位から内定が出たので、結果的に使わずに済みました。
求人票で最初に見るところ
未経験歓迎と書いてあっても、必須要件に「大学・大学院で理系学部・学科を学ばれた方」と入っていることがあります。ここを見落とすと、応募しても書類で落ちます。
dodaで「組み込みエンジニア」を検索して求人を眺めた体感では、学部指定が多いのはメーカーで、SIer・SESはほとんど限定なしでした。メーカーでも学部指定があるのは1〜2割程度です。
私自身は約50社に応募して、書類が通ったのは12社。その大半がSES・SIerで、メーカー系はごくわずかでした。中途未経験の現実的な入口はSES・SIerで、メーカーはそこで経験を積んでから狙う、というのが実際に動いてみた感触です。
求人の見極めとアピールのしかた
未経験歓迎の求人にも、大きく分けて2種類あります。
教育体制やキャリアの伸びが有利なことが多い。できるだけ早い年齢でここを狙うのが理想。
入りやすい反面、教育体制やキャリアの伸びはメーカー系と比べて不利なことが多い。
年齢の目安についてはFAQで触れます。
SES系に応募する場合は、次の3点だけは選考の段階で必ず確認してください。
- 事業がソフト開発中心か(設計職やコールセンター等、多職種の派遣も手広く扱う会社は要注意)
- 選考の途中で別職種を打診してこないか
- 「組込みエンジニアとして採用される」と言質をくれるか
私自身、組込み志望で応募したのに、選考の途中で設計職を打診された会社がありました。この見極めの詳細と実際に起きたミスマッチの話は、未経験から組込みエンジニアに転職する前に準備したことで書いています。
アピールの軸は2つです。ひとつは、前職での主体性・リーダーシップ・チームへの貢献を具体的に語ること。私の面接ではここが決め手になりました。もうひとつは、マイコンで実際に動くものを作っておくことです。知識をどれだけ語るより、自分の手で作った成果物のほうが学習意欲とポテンシャルがまっすぐ伝わります。作るものに迷ったときの面接向けの題材は、要件定義書から動くものを仕上げるArduino総合演習(自動温湿度調整システム)。これから準備する方には、この2つをそろえて面接に臨むことをおすすめします。
整理ができたら、次は応募書類に落とす番です。志望動機は「なぜ組込みか」「なぜこの業界か」「なぜこの会社か」を順番に答える欄で、書き方に型があります。私が実際に出した実物と、出身別の書き分けは組込みエンジニアの志望動機の作り方にまとめました。
段階2の到達チェック
- 職務経歴を「主体的に取り組んだエピソード」中心に洗い出した
- 組込みエンジニアの基礎知識(どんな仕事か・どんな技術が必要か)を自分の言葉で説明できる
- SPIの足切り対策を済ませた
- 志望動機を書き上げ、応募先ごとに差し替える形にした
- 悩む時間を減らし、応募に動き出した
段階3・4:入社後の学びは「入ってから」で間に合う
入社すると、研修(段階3)で初めてプログラミングを本格的に学びます。現場配属(段階4)からは、チーム開発・設計書の書き方・製品知識・車載特有の技術(CAN通信や故障診断など)を覚えていきます。正直、1年目は覚えることが膨大でした。1年目に具体的に何へ戸惑い、どう乗り越えたのかは組込みエンジニアは未経験にはきつい?入社1年目で戸惑ったことに体験談としてまとめています。
ただ、これらは学校や独学ではほぼ学べない企業ノウハウなので、入社時点で全部知っている必要はなく、入ってから吸収する前提です。そのため、採用で見られるのが「伸びしろ」なのだと納得しました。転職前のいまやるべきことは、段階1・2の準備だけで十分です。
現場で実際にどんな知識を覚えるのか(マイコン・CAN通信・故障診断のリアル)は、車載組込みソフトとは?仕事内容の解説に詳しく書いています。
未経験から組込みエンジニアを目指す人のよくある質問
未経験から組込みエンジニアを目指す読者からよく寄せられる疑問を、筆者の体験をもとにまとめました。
プログラミング未経験でも組込みエンジニアになれますか?
なれます。未経験者を採用する企業の多くは、入社時点で高いプログラミング力を求めていません。筆者自身もプログラミングはほぼ未経験のまま転職し、本格的な学習は入社後の研修から始めました。まずはC言語に少し触れて「拒否反応がない」状態をつくれば十分です。
組込みエンジニアの転職に資格は必要ですか?
必須ではありません。筆者は応用情報技術者試験とC言語検定1級を持っていますが、これらは「あれば加点」程度で、無いと応募できないものではありませんでした。ただし学習意欲や基礎力のアピール材料にはなります。
組込みに特化したものとしては、ETEC(組込み技術者試験制度)があります。一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)が運営していて、クラス1とクラス2の2段階です。転職の必須条件で見かけることはありませんが、「組込みを本気で目指している」という姿勢を書類で示す材料にはなります。私は資格0の状態で転職したので、資格待ちで応募を止めるのだけはおすすめしません。
未経験から目指すなら何歳までが目安ですか?
あくまで体感ですが、教育体制の整った優良企業の未経験採用は24〜26歳あたりが一つの目安になりがちでした。それ以降は条件の良くない求人が中心になりやすいので、悩んでいるより早く動くほうが成功率は上がります。
転職にポートフォリオは必要ですか?
提出書類としてのポートフォリオは求められませんでした。ただし、マイコンで実際に動くものを作った経験は、面接での最大のアピール材料になります。「何を作ったか」「どこでつまずいて、どう解決したか」を自分の言葉で語れると、学習意欲とポテンシャルが一気に伝わります。凝った完成品でなくていいので、小さくても「作って動かした」と言える状態で面接に臨むのがおすすめです。題材に迷う場合は、要件定義から実装まで通しで経験できるArduino総合演習に挑戦してみてください。
入社前にどこまで勉強しておけばいいですか?
完璧に仕上げる必要はありません。筆者が入社前に取り組んだのはSPI試験の対策が中心で、プログラミングの本格的な学習は入社後でした。入社前は「SPIで足切りを突破できる状態」と「C言語に少し触れておく」ことを優先すれば十分です。
まとめ:まずは「早く動く」ことから
未経験から組込みエンジニアになるまでの4つの段階を振り返ります。
- 未経験でも組込みエンジニアにはなれる。採用時に見られるのはプログラミング力より、前職での取り組み・SPI・年齢
- マイコンで実際にモノづくりした経験は最大のアピール材料。小さくても「作って動かした」を語れる状態で面接に臨む
- 本当に大事なのは対人スキルと設計・資料作成能力
- 優良企業は24〜26歳が一つの目安。悩むより早く動くのが成功率を上げる
- 入社後に覚えることは膨大だが、入ってから吸収する前提。転職前の準備は段階1・2で十分
最初の一歩は1つだけです。SPI対策で足切りを突破できる状態をつくりながら、C言語に少し触れてみてください。
完璧な準備が整う日は来ません。私自身、資格0のまま動き出して何とかなりました。悩んでいる時間がいちばんもったいないです。