技術派遣・SESの組込み求人に出す志望動機|「なぜ派遣か」に答える型
未経験から組込みエンジニアを目指すと、応募先の多くが技術派遣やSESの会社になります。実際、私が約50社に応募して書類が通った12社も、大半がSESとSIerでした。
- 「なぜメーカーや自社開発ではなく派遣か」に7つの理由から答える
- そのまま書くと落ちる1つを、仕事の性質に変換して使う
- 志望動機を書く前に、応募してはいけない会社を見極める
SESの選考で問われるのは、実質「なぜメーカーや自社開発ではなく派遣なのか」の1点だけです。裏を返せば、ここさえ通れば書類は読まれます。
目次
未経験がSESに応募するのは、戦略として正しい
最初に確認しておきたいのは、SESを選ぶこと自体は後ろめたいことではないという点です。組込みの実務は、入社してからでないと覚えられないことのほうが多い。開発ツールの使い方、プロジェクト固有のルール、製品ごとの技術資料。入社前に学びようがない知識が業務の大半なので、早く現場に入れることには意味があります。
正直な話をすると、待遇の面ではSESは不利です。私が転職活動をしていたときも、SESは給料が低めのオファーが多いという印象でした。それでも入口として選ぶ価値はある。その判断を自分でしたと書けるかどうかで、志望動機の印象が変わります。
ここまでの「SESが現実的な入口」という話は、中途、つまり社会人の転職に限った話です。新卒採用はそもそも未経験を育てる前提なので、新卒ならメーカー系も十分に狙えます。中途向けの記述を読んで応募先をSESだけに狭めると、狙えたはずの選択肢を自分から捨てることになります。この記事の書き方は、SESも受けると決めた場合に使ってください。学生が書く場合の文章の形は新卒向けの作例にあります。
「なぜ派遣か」に使える7つの理由
聞かれているのは「SIerや自社開発ではなく、なぜSESなのか」です。メリットとデメリットの両方を分かったうえで選んだ、という形にします。
技術派遣という働き方の利点は、次の7つに整理できます。
- 知識や経験が少なくても仕事に就きやすい未経験で、とにかく早く実務に入りたい人(そのまま書くと落ちる。変換が必要)
- 幅広い知識やスキルが身につく1社の中だけで完結するやり方に不安がある人
- 自分のキャリアビジョンに応じた働き方ができる将来やりたい領域が決まっていて、そこへ近づく順番を考えている人
- 大きなプロジェクトにも関わりやすい前職の規模が小さく、大規模開発の進め方を経験したい人
- 人脈が広がりやすい社外の技術者とのつながりを仕事に使ってきた人
- キャリアアップを目指しやすい将来プロジェクトマネージャーや特定分野の専門家を目指している人
- 案件が合わなかったときに調整してもらえる前職で配属のミスマッチを経験している人
7つ全部を書かないでください。1つ、多くて2つに絞って、自分の経歴とつなげます。並べるほど印象が薄くなります。
7番目の落とし穴と、1番目の変換のしかた
7の「案件が合わなかったときに調整してもらえる」は、SESの構造上の利点です。雇用は派遣元との間にあるので、現場が変わっても職を失いません。ただし志望動機に書くときは、合わなかったときの保険としてではなく「合う領域を見つけて長く関わりたい」という向きで書いてください。前者のまま書くと、辞める前提の人に読まれます。
問題は1です。「未経験でも入りやすいから」は事実ですが、そのまま書くと志望動機になりません。自分の都合であって、会社が採用する理由になっていないからです。給料や条件を動機にするのと同じ扱いになります。
この理由を使うなら、仕事の性質に変換します。
未経験可の求人だったため応募しました。研修制度が充実している点にも魅力を感じました。
組込みは、開発ツールの使い方もプロジェクト固有のルールも入社後に覚える範囲が広い仕事だと理解しています。独学を続けるより早く開発の現場に入って身につけたいと考え、案件に入る形で経験を積める働き方を選びました。
右側は嘘ではありません。組込みの実務は入社前に学びようがない部分が多く、早く現場に入ることには実際に意味があります。同じ「早く入りたい」でも、仕事の性質を理由にすると志望動機として成立します。
7つの理由だけでは足りない。会社を選んだ理由が要る
7つはどれも「SESという働き方」を選んだ理由であって、その会社を選んだ理由ではありません。ここで止めると「それ、他の派遣会社でもよくない?」と読まれます。
組込みに特化した派遣会社なら、扱う案件の分野が偏っています。求人票や実績ページから領域を読み取って、その領域に関わりたいと書いてください。会社を選んだ理由としては、ここが最も具体的に書けます。
SES向けの作例(置き換えるところつき)
文章の形にすると、こうなります。私が実際に出したものではなく、SES応募のために組み直した作例です。型は私が50社に使ったものと同じ5要素です。
- ① 結論
- 製品の動きを作る側に回りたいと考え、組込みエンジニアを志望しました。
- ② 背景
- 前職では製造現場で設備の保全を4年担当し、機器が止まる原因を追ううちに、動作を決めているプログラム側に関心を持つようになりました。転職前にC言語の基礎を学び、マイコンでセンサーの値から機器を動かす装置を1つ作っています。
- ③ 接続
- 設備が止まったときに原因を切り分けて対処してきた経験は、不具合の解析が業務の多くを占める組込みでも活かせると考えています。
- ④-a 業界
- ◯◯分野の製品開発に関わりたいと考えており、貴社はその領域の案件を専門に扱われています。
- ④-b 企業
- 組込みは入社後に覚える範囲が広い仕事だと理解しており、学習を続けるより早く開発の現場に入って身につけたいと考えました。複数の現場を見られる働き方は、その考えに合っています。
- ⑤ 入社後
- 入社後はまず担当する案件の製品仕様とC言語の実務レベルへの引き上げに集中し、3年後には一人で機能を任せてもらえる状態を目指します。
- ① 結論
- 人の安全に関わる製品のソフトを作りたいと考え、組込みエンジニアを志望しました。
- ② 背景
- 前職では医療機器の営業を5年担当し、機器が現場でどう使われ、止まったときに何が起きるかを見てきました。使う側から見ていた製品の中身を作る側に回りたいと考え、C言語の基礎を終え、マイコンでセンサーの値を一定周期で読む装置を作っています。
- ③ 接続
- 現場で発生した不具合を聞き取り、再現条件を整理して開発部門へ渡す仕事をしてきました。事象から原因の範囲を絞る進め方は、組込みの解析でも同じだと理解しています。
- ④-a 業界
- 医療機器や産業機器のように、止まると人に影響が出る製品の開発に関わりたいと考えています。
- ④-b 企業
- こうした製品は、開発体制が大きく、工程ごとに専門が分かれた現場で作られています。貴社は◯◯分野の案件を継続して受けられており、規模の大きい開発の中で工程ごとの進め方を身につけたいと考えました。
- ⑤ 入社後
- 入社後はまず担当工程の仕様と検証手順を理解し、3年後には安全に関わる機能の設計から検証までを任せてもらえる状態を目指します。
置き換えるのは②③④です。④-aのその会社の領域だけは応募先ごとに差し替えてください。ここが空欄同然だと、どの派遣会社にも出せる文章になります。
④は「なぜこの業界か(④-a)」と「なぜこの働き方・この会社か(④-b)」の2階層です。この記事が扱うのは④-bで、④-aの書き方は業種ごとの記事に分けています。
5要素それぞれの意味と埋め方は、組込みエンジニアの志望動機の作り方に書いています。
SESでよくあるNGと直し方
| やりがちな書き方 | どう読まれるか |
|---|---|
| 幅広い経験を積みたいです | SESの説明文をそのまま返しているだけ。どの会社にも出せる |
| 未経験可と書かれていたので応募しました | 条件で選んだと明言している。志望の理由になっていない |
| 研修制度が充実しているので学ばせていただきたい | 学習の主体が会社になっている。自分で始めた事実が無い |
| いずれはメーカーで働きたいです | 正直だが、そのまま書くと辞める前提の人と読まれる |
| 経験が浅く至らない点も多いと思いますが | 謙遜が強すぎて、採用する理由を渡せていない |
1行目は7つの理由の2番をそのまま書いた形です。理由としては正しいのですが、これだけだと派遣会社の説明文を返しているだけになります。幅広い経験を積んで、その先に何をしたいのかまで書いて初めて志望動機になります。
4行目は補足が要ります。将来メーカーへ移りたいという気持ち自体は珍しくありませんが、志望動機の欄に書く内容ではありません。書くなら「この会社で何を身につけるか」に変換してください。
様々な現場を経験できる点に魅力を感じました。将来的にはメーカーで製品開発に携わりたいと考えています。
複数の現場で開発の進め方を見たうえで、自分が長く関わる製品領域を決めたいと考えています。貴社は◯◯分野の案件を継続して受けられており、その領域で腰を据えて経験を積みたいと考えました。
右側は、内容としては同じ「いろいろ見たい」です。違うのは見た先に何をするかが書かれている点と、その会社で続ける前提になっている点です。
志望動機を書く前に、その会社を見極める【体験談】
SESに応募するなら、志望動機より先に確認してほしいことがあります。私が実際にヒヤッとした話です。
SES企業のなかには、事業がソフト一本ではなく、機械設計職やコールセンターなどの派遣も手広く扱っている会社があります。私の場合、組込みエンジニアとして応募したのに、選考の途中で「設計職もあるけれど、設計職にアサインしてもいいか」と打診された会社がありました。組込みを志望して受けているのに、です。正直「めちゃくちゃだな」と思いましたが、選考の段階で確認してくれただけ、まだマシなほうかもしれません。
これが入社後に「君はソフトではなく前職に近い業務をやって」と言われていたら、組込みエンジニアとしてのキャリアが始まる前に別の道へ流されていました。
見極めの基準はシンプルです。SESが悪いのではなく、エンジニア以外の派遣まで幅広く斡旋している会社が危ない。エンジニア派遣を専門にしている会社なら問題ありません。
- 設計職・コールセンターなど、多職種の派遣も手広く扱う
- 選考の途中で別職種を打診してくる
- 配属職種や担当案件の領域を明言しない
- 事業がソフト開発に特化している
- 組込み案件の実績を具体的に説明できる
- 組込みエンジニアとして採用すると言質をくれる
この確認は志望動機にも使えます。会社の専門領域が分かれば、④に書く「なぜこの会社か」が自然に出てくるからです。
キャリアプランの欄で、SESを出口にしない
5要素の最後、入社後とキャリアプランの欄です。ここでSESの人が書きがちなのは「いろいろな現場を経験して成長したい」ですが、これだと3年後の姿が見えません。
私が勧めるのは、身につける技術を名指しする書き方です。「3年後には一人で機能を任せてもらえる状態」「マイコンの下回りを扱えるようになる」といった形にすると、その会社で働き続ける前提の文章になります。
もう1つ、業界の動きにも触れておきます。効率化や内製化が進むなかで、外注として仕事を受ける事業は今後厳しくなる可能性があると私は見ています。だからこそ大事なのが、派遣として働く期間に何を身につけるかを自分で決めておくこと。それを志望動機に書けている人は、考えて選んだ人だと伝わります。
書いた志望動機どおりに配属されるか、面接で確認する
志望動機に「組込みの開発に関わりたい」と書いて出した以上、そのとおりの配属になるかは自分で確かめる必要があります。書いた内容と配属がずれたら、志望動機を書いた意味がなくなるからです。
私は逆質問で「組込みエンジニアとして採用していただけるのでしょうか」と聞き、配属の言質を取っていました。
聞きにくいと感じるかもしれませんが、自分のキャリアを守るための正当な確認です。誠実な会社なら、はっきり答えてくれます。濁された場合は、その反応自体が判断材料になります。
よくある質問(FAQ)
SESはやめたほうがいいと聞きますが、本当ですか?
SES自体は未経験の入口として有効です。やめる必要はありません。注意すべきなのは、ソフト以外の派遣も幅広く扱う会社です。エンジニア派遣を専門にしている会社なら問題ないというのが私の考えです。
「早く現場に入りたい」は、本音では入りやすいからです。書いていいですか?
書いて構いません。組込みは入社後に覚える範囲が広いというのは事実なので、嘘にはなりません。ただし「未経験可だったから」という条件の話にはせず、仕事の性質を理由にしてください。
SESは年収が低いと聞きますが、志望動機に影響しますか?
志望動機の欄に条件の話は書かないでください。私の肌感でもSESは低めのオファーが多かったですが、それは希望年収の欄や面接で話す内容です。
将来メーカーへ移りたい場合、面接で正直に言うべきですか?
聞かれない限り、自分から言う必要はありません。聞かれたら「まずはこの会社で一人前になることが先」と答えたうえで、身につけたい技術を具体的に話すのが無難です。
まとめ
技術派遣・SESの組込み求人に出す志望動機の要点です。
- 未経験の入口としてSESを選ぶこと自体は、戦略として正しい
- 「なぜ派遣か」の答えは7つの理由から選ぶ。自分でひねり出さない
- 選ぶのは1つ、多くて2つ。7つ並べるほど印象が薄くなる
- 「未経験でも入りやすいから」は仕事の性質に変換してから書く
- 7つは働き方を選んだ理由。その会社を選んだ理由は別に要る
- 志望動機を書く前に、エンジニア派遣を専門にしている会社かを確認する
- キャリアプランの欄では、身につける技術を名指しする
- 面接では、組込みエンジニアとして採用されるかの言質を取る
SESは入口であって、行き止まりではありません。選んだ理由を自分の言葉で書けるなら、書類はきちんと読まれます。
書類の前後を、抜けなく埋める
学習の順番、応募先の選び方、面接で聞かれること。未経験からの転職の流れを1本にまとめています。応募先の見極めまで含めて確認してから書類に戻ると、書く内容が定まります。