文系から組込みエンジニアを志望する動機の書き方|「なぜ組込みか」の作り方と例文
文系の学部を出て組込みの求人に応募するとき、志望動機の欄で手が止まる理由ははっきりしています。「なぜ組込みなのか」を説明する材料が、学歴の中にないからです。
理系なら「学科で制御を学んで興味を持った」の一文から書き始められます。文系にはその一文がありません。だから動機の出発点を、自分で見つけて作る必要があります。
- 学歴の中に材料がない文系でも、「なぜ組込みか」を自分の言葉で書き切る
- 「なぜ理系ではないのに」に、守りに入らず答える
- 法人営業から、法学部の事務職から、学生から。作例3本を自分の経歴に置き換える
なお「文系でも組込みエンジニアになれるのか」という判断そのものは組込みエンジニアは文系でもなれる?にまとめています。この記事は、なると決めた人が応募書類に何を書くかだけを扱います。
目次
文系が「なぜ組込みか」を拾える5つの場所
志望動機の最初の1文は「なぜ組込みエンジニアなのか」です。ここが弱いと、あとに何を書いても「なんとなくIT業界を選んだ人」に見えます。文系はこの1文を学歴から引けないので、別の場所から材料を拾います。
拾える場所は5つあります。
- 使っていた製品・サービスに感心して、作る側に回りたくなった仕事や生活で、特定の機器やサービスに助けられた経験がある人
- 既存のツールでは解決できない課題に当たった仕事の現場で「これは今ある道具では無理だ」と感じたことがある人
- 独学でやってみたら、モノを作る面白さがあったすでに手を動かし始めている人。文系では最も確実な材料
- 専攻の考え方と、プログラムの組み立て方が同じだと気づいた法学・経済学など、条文や理屈を構造で追う訓練を受けてきた人
- 使う人の側から見た不便を、設計する側で直したい接客・営業・事務など、製品を「使わされる側」で見てきた人
4は分かりにくいので補足します。法学なら条文の条件分岐を追う訓練、経済学なら数式でモデルを組み立てる訓練を受けています。プログラムの条件分岐やデータ構造は、対象が違うだけで同じ作業です。専攻を「畑違い」と切り捨てず、考え方が重なる部分を探してください。
1つ選んで、いつ、何があって、そう思ったのかを出来事が浮かぶ形で書いてください。文系の場合、組込みとの出会いは必ず社会に出た後(または大学に入った後)にあります。その時期がはっきりしているほど、思いつきの転職ではないと伝わります。
文系のエンジニア志望で最も多い書き方ですが、これだけだと「スキルを身に付けたら転職するのでは」と読まれます。同じことを書くなら「何を作れるようになって、その先で何をしたいのか」まで下ろしてください。
「ソフトの中でもなぜ組込みか」まで下ろす
5つの起点だけだと、まだIT全般の志望動機です。文系の応募者が一番落としやすいのがここで、Webでもアプリでもなく組込みを選んだ理由が抜けます。面接官から見ると「なんとなくIT業界を受けている人」と区別がつきません。
組込みを選ぶ理由として使えるのは、次の4つです。
1. 自分の書いたソフトが、物として世に出る
サービスは終了すれば消えますが、出荷した製品は物として残り、10年動きます。試作品が初めて動いた瞬間や、担当した製品が店頭に並ぶところを見られるのは、組込みの特徴としてよく挙げられる点です。
2. 人の生活や安全を、直接支える側に回る
医療機器、自動車の安全装置、インフラ設備。組込みソフトが止まると、人の生命や生活に直接影響が出ます。「誰の役に立っているのか分からない」という感覚から抜けたい人は、ここを動機の中心に置けます。
3. 画面の中で完結しない
センサーが値を返し、モーターが回り、LEDが光る。動いたかどうかが目で見えます。この感覚は、マイコンを1枚買えば実際に体験できます。書く前に体験しておいてください。
4. どの分野の物を作りたいかまで決めている
組込みは家電、自動車、医療、産業機器と分野が広く、分野ごとに求められる知識も開発の進め方も違います。「この分野の物を作りたい」まで書けると、応募先を選んだ理由と自然につながります。分野ごとの動機の書き方は、車載・自動車、IoT・スマート家電、ロボット・FAの記事に分けています。
文系が必ず聞かれる1問も、動機で答える
この質問で見られているのは、動機に一貫性があるかどうかです。学力を確かめているわけではありません。文系の応募者を見たとき、面接官は単純に「なぜこの人はわざわざ回り道になる方を選んだのか」が分からない。そこに納得できる答えがないまま採用すると、入社後に「思っていた仕事と違う」で辞められる可能性がある。だから確認しています。
つまりこの質問への答えは、前の章で拾った動機の起点そのものです。「仕事でこういう場面があって、製品の中身を作る側に行きたくなった」と言えるなら、それが答えになります。
答え方で気をつけるのは、守りに入らないことです。「文系ですが頑張ります」ではなく、製品を動かすソフトを作りたいと正面から言い切ってください。学部の選択を言い訳する文章にすると、それ以降を読んでもらえません。
文系向けの作例(置き換えるところつき)
実際の文章の形を出します。これは私の体験ではなく、文系の方が使うための作例です。私は工学部の出身なので、文系として応募した経験は持っていません。型は私が50社に出したものと同じ5要素で組んでいます。
③には、前職で何をしてきたかを1つだけ入れます。ここは強みを語る欄ではなく、①で書いた動機が思いつきではないことを裏づける欄です。長く書くほど志望動機がぼやけるので、事実を1つに絞ってください。
- ① 結論
- 製品の仕組みそのものを作る側に回りたいと考え、組込みエンジニアを志望しました。
- ② 背景
- 前職では産業機器メーカーの法人営業を4年担当し、お客様の現場で機器の不具合や使いにくさの相談を受けてきました。要望を開発部門へ渡すたびに、製品の動きを決めているのは内部のソフトなのだと分かり、自分がその側で作りたいと考えるようになりました。半年前からC言語の学習を始め、マイコンボードでセンサーの値に応じて動きを変えるプログラムを作っています。
- ③ 接続
- 現場で聞いた不具合の状況を整理し、再現条件として開発部門へ渡す仕事を4年続けてきました。事象から原因の範囲を絞る進め方は、組込みの解析でも同じだと理解しています。
- ④-a 業界
- 産業機器は、使う人が毎日その動作に合わせて仕事をしている製品です。現場の困りごとを聞いてきた立場として、動きを決める側から関わりたいと考えています。
- ④-b 企業
- 貴社は◯◯分野の機器を自社で開発されており、求人票にある△△の工程は、前職で私が現場の課題を最も多く聞いてきた領域です。
- ⑤ 入社後
- 入社後はまずC言語とマイコンの理解を業務レベルまで引き上げ、担当する機能のソフトを一人で書けるようになることを目標にしています。
- ① 結論
- 決められた条件どおりに正確に動くものを、自分で組み立てる仕事がしたいと考え、組込みエンジニアを志望しました。
- ② 背景
- 大学では法学を専攻し、前職では契約書の確認と管理を3年担当してきました。条文の条件分岐を追う作業を続けるうちに、独学で始めたプログラミングの条件分岐がほとんど同じ考え方でできていることに気づきました。今はマイコンボードを買い、温度センサーの値がしきい値を超えたらブザーを鳴らすところまで自分で書いています。実際に物が動いたときに、この仕事をやりたいと決めました。
- ③ 接続
- 契約書の確認では、条件の抜けや矛盾を見つけて指摘する作業を毎日していました。仕様の抜けを設計の段階で見つける作業と近いと考えています。
- ④-a 業界
- 中でも、止まると人の生活に影響が出る製品の分野に関心があります。正確さが求められる領域で仕事をしたいと考えています。
- ④-b 企業
- 貴社は◯◯分野の製品を長く手がけられており、募集要項にある△△の工程に関わりたいと考えました。
- ⑤ 入社後
- 入社後はまずC言語とマイコンのデータシートを読めるようにし、担当する機能のソフトを一人で書けるようになることを目標にしています。
置き換えるのは②③④です。②には自分の職種と年数、組込みを知ったきっかけ、いま自分でやっていることを入れてください。③には前職の事実を1つ。④は応募先の製品名と、求人票に書いてある担当工程を入れます。①と⑤はほぼそのままでも通ります。
④は業界(④-a)と企業(④-b)で分けて書きます。別の会社に出すときは④-bを差し替えるだけで済み、別の業界に出すときは④-aから作り直します。この分け方の理由は元記事の使い回しの章にあります。
型そのものの解説と、5要素をどう埋めるかは組込みエンジニアの志望動機の作り方に書いています。
文系がやりがちなNGと、その直し方
文系の応募書類で手応えが悪くなりやすい書き方を挙げます。どれも動機の書き方で損をしているものです。
| やりがちな書き方 | どう読まれるか |
|---|---|
| 手に職をつけたいと思いました | 身につけたら辞めるのでは、と読まれる。組込みである理由も無い |
| IT業界は将来性があると思いました | 誰でも書ける一般論。自分の話になっていない |
| 文系ですが、人一倍努力します | 不利を自分から強調しているだけで、志望の理由が書かれていない |
| 研修制度が充実しているので学ばせていただきたい | 学習の主体が会社になっている。自分で始めた事実が無い |
| プログラミングスクールで学んだので大丈夫です | 学んだ事実より、何を作ったかが問われる |
| ものづくりが好きです | 全員が書く。何を作りたいのかまで下ろせていない |
最後の2行は、「ソフトの中でもなぜ組込みか」が抜けたときに出てくる書き方です。1つ、直し方を並べて見せます。
文系出身ですが、手に職をつけたいと考えIT業界を志望しました。ものづくりが好きで、将来性のある分野で長く働きたいと思っています。
前職では店舗で使う機器が止まるたびに手作業に戻る様子を見てきました。動きを決めているのが内部のソフトだと知り、その側を作りたいと考えました。画面の中で完結せず、物が実際に動くところまで自分の担当になる点が組込みを選んだ理由です。半年前からC言語を学び、マイコンで小さな装置を1つ作りました。
違いは、いつ何があったかが入っていることと、ITの中で組込みを選んだ理由が書かれていることです。文系であることを謝る必要はありません。
新卒の就活で使うときの読み替え
ここまでは中途、つまり社会人の転職を前提に書いてきました。文系の就活生も同じ型で書けます。読み替えるのは材料だけです。
前職の話が使えないので、②の背景には学業、ゼミ、研究、サークル、アルバイト、インターンから材料を取ります。5つの起点のうち、学生が一番使いやすいのは2(既存のツールでは解決できない課題に当たった)、3(独学でやってみた)、4(専攻の考え方が同じだと気づいた)です。ゼミの活動で手作業に戻された、アルバイト先の機器が止まった、独学で書いたプログラムが実際に動いた。出来事が1つあれば動機になります。
もう1つ、中途と違う点があります。新卒採用はそもそも未経験を育てる前提なので、技術の準備が浅くても選考に乗れます。文系だからと応募先を絞る必要はありません。そのぶん、⑤の入社後を具体的に書けるかで差がつきます。
私自身は中途で組込みへ移ったので、新卒就活を経験したわけではありません。ここは事実として言えることだけ書いています。
- ① 結論
- 製品の仕組みそのものを作る側に立ちたいと考え、組込みエンジニアを志望しました。
- ② 背景
- 大学では法学を専攻していますが、アルバイト先の店舗で機器が止まるたびに手作業へ戻る様子を見て、動作を決めているプログラムに関心を持ちました。独学でC言語を学び、マイコンボードで温度センサーの値に応じて動きを切り替えるプログラムを自作しています。
- ③ 接続
- ゼミでは専門の異なる相手に調査結果を説明する機会が多く、伝える順番を組み立てる練習を重ねてきました。複数の部署が関わる開発でも活かせると考えています。
- ④-a 業界
- 生活や仕事の現場で毎日使われる機器の分野で、動きを作る側に関わりたいと考えています。
- ④-b 企業
- 貴社は◯◯分野の機器を自社で開発されており、募集要項にある△△の工程は、製品の使い勝手を決める部分だと理解しています。
- ⑤ 入社後
- 入社後はまずC言語とマイコンを覚え、担当する機能のソフトを一人で書けるようになることを目標にしています。
置き換えるのは②③④です。②には専攻と、組込みに関心を持った出来事、いま自分でやっていることを入れてください。③はゼミ、アルバイト、サークルのどれからでも構いません。
学習の証拠は「読める」ところまでで足りる
志望動機に学習の話を書くとき、どこまで進んでいれば書いていいのかで迷うと思います。私の考えでは、プログラムが読めるところまでで十分です。
未経験が最初に潰すべきなのは言語の知識です。プログラムが読めれば、現場に入ってから最低限なんとかなります。ハードの理解と数学は、入社後に1年から2年かけて同時並行で覚えていけばいい。この順番を志望動機の⑤(入社後)に書くと、仕事の進み方を分かっている人だと伝わります。
もう1つ、文系の方に伝えておきたいことがあります。マイコンそのものの知識は、理系でも大学で習いません。誰もが0からのスタートで、高度な数学も要りません。だから下回りの処理や制御ロジックを組む領域は、文系でも入りやすい部類です。応募先を選ぶときも、この領域を扱っている求人は狙い目になります。
書く前に、募集要項の必須要件を見る
志望動機を磨く前に、必ず確認してほしいことがあります。
組込みの求人には、必須要件に「大学・大学院で理系学部・学科で学ばれた方」と書かれているものがあります。私がdodaで組込みの求人を見た体感では、学部を指定しているのはメーカーで全体の1〜2割程度、SIerやSESはほぼ指定なしでした。ここを見落とすと、書類の中身と関係なく落ち続けて時間を失います。
逆に言えば、指定していない求人のほうがかなり多いということです。組込み自体は、入職に特定の学歴や資格が必要とされる仕事ではありません。厚生労働省の職業情報サイトでも「入職にあたって特に学歴や資格は必要とされない」と整理されています(参考:職業情報提供サイト job tag「システムエンジニア(組込み、IoT)」)。要件は会社ごとの方針なので、求人票を1件ずつ見て、通る場所に出してください。
よくある質問(FAQ)
学部を書かずに済ませることはできますか?
できません。履歴書に学歴を書く以上、必ず目に入ります。隠すより先に触れて、なぜ組込みを選んだかを説明したほうが印象は良くなります。触れずに提出すると、面接で必ずその話から始まります。
機器に触れる仕事をしていません。動機の起点が見つかりません。
仕事の中に無ければ、生活か学業から拾ってください。5つの起点のうち、3(独学でやってみた)はどんな経歴の人でもこれから作れます。数千円のマイコンボードを1枚買って、センサーの値で何かを動かすところまでやる。その体験そのものが動機の起点になります。何を作ろうとして、どこで詰まって、動いたときに何を思ったか。書ける材料はそこで手に入ります。
数学が苦手でも志望動機に書いて大丈夫ですか?
苦手だと自分から書く必要はありません。実務で毎日使うのは四則演算や単位換算、2進数と16進数の扱いくらいです。三角関数や微分積分は制御などで使いますが、頻度は高くありません。詳しくは文系でもなれるかの記事にまとめています。
作ったものがないと落ちますか?
落ちるとは限りませんが、あるほうが確実に有利です。文系は理系のように「大学で学びました」が使えないので、手を動かした事実が学習意欲の代わりになります。数千円のマイコンボードで、センサーの値を読んで何かを動かす程度のもので構いません。
新卒の文系でも同じ書き方でいいですか?
②の背景を前職から学業やゼミ、アルバイトに差し替えれば同じ型で書けます。新卒は育てる前提の採用なので、③の接続が薄くても⑤の入社後を具体的に書けば戦えます。
まとめ
文系から組込みの志望動機を書くときの要点です。
- 「なぜ組込みか」を先に作る。5つの起点(製品に感心した、既存ツールで解決できなかった、独学でやってみた、専攻の考え方が同じ、使う側から見た不便)から1つ拾う
- ITの中で組込みを選んだ理由まで下ろす。ここが抜けると「なんとなくIT」に見える
- 「手に職をつけたい」「ものづくりが好き」で止めない。全員が書く文章になる
- 「なぜ理系ではないのに」は動機の一貫性を見る質問。拾った起点をそのまま答えにする
- 組込みを知ったきっかけを、いつ何があったかが浮かぶ形で書く
- 学習は「プログラムが読める」まで進めて、ハードと数学は入社後と書く
- 書く前に、募集要項の必須要件で学部の指定を確認する
文系の志望動機は、学歴で説明できないぶん自分の言葉で書くしかありません。逆に言えば、理系の応募者が「学科で学んだので」で済ませてしまう部分を、あなたは出来事から語れます。動機がはっきりしている書類は、学部に関係なく読まれます。
書類の前後を、抜けなく埋める
何をどの順で学び、どこに応募し、面接で何を聞かれるのか。未経験からの転職の流れを1本にまとめています。志望動機を書く手が止まったら、全体の位置を確認してから戻ると進みます。